【三谷幸喜×青木さやか】「生き様」が問われる舞台の世界はやっぱり面白い
芝居のテクニックが通用するのは最初の10分。
あとは、どう生きてきたかが見られる
青木:私の場合はとにかく売れたかったんですね。何でもいいから売れたかった。結果、ありがたいことに皆さんに覚えていただけたのですが、いつからか“実際の私”と“青木さやか”にズレが生じたような気がして。そのズレを埋められない数年は悩みながら過ごしました、舞台をやっている時はすごく楽しかったんですよね。女優としても頑張りたいですし、エンターテインメントの世界でどうにか本物になって、お世話になった方たちに恩返しをしていきたいです。
三谷:お芝居って、テクニックで見せられるのは最初の10分ぐらい。あとはその人がどういう人なのか、どういうふうに生きてきたのかということをお客さんは見ると言われています。確かつかこうへいさんの言葉だったと思います。芝居以前のその人の佇まいや、舞台に立っている時の空気感も含めて、どうやって生きてきて今日この舞台上に至ったのかということが、なにより大事なんです。そういう意味では、芝居ってテクニックだけじゃない。やっぱり青木さんの芝居をみていると“ちゃんと生きてきた”感じがすごくしますからね。お父さんが軍人さんでしたっけ。
青木:いえ、祖父が軍人でした。
三谷:それが何かね、漂うんですよ。軍人の魂が宿っている。背筋が伸びているというか。そして品があって知的。青木さんは、これからはエロスを表現することにも挑戦したいとおっしゃっていたけれど、それも分かるんです。例え全裸で舞台に立ったとしても、決して下品にならないと思うんですよね。今回の『23階の笑い』のラスト近くにも、青木さんのむせかえるようなエロスの片鱗が見えるシーンがある。
青木:私は自分を客観的に見て、エロスというものがすごく合うんじゃないかなと思ったんです。そうですね、『23階の笑い』ではエロスへの挑戦がありますが、2幕ではお客さんみんなが、「あ、いまセックスのことを考えた……」という感じになったらいいなと思っています。
三谷:それはどうか分からないけど、青木さんのエロスは健康的なんですよ。前に映画『ロマンシング・ストーン』のキャスリン・ターナーみたいな役をやって欲しいって言いましたよね。太もも丸出しで崖を転がり落ちる青木さん、観たいなあ。
青木:欲情を焚きつけられるよう、頑張ります。今日お話を聞いて、改めてしっかり生きていこうと思えましたよ! 三谷さん!
三谷:だからその気迫が怖いんですよ。
青木:その怖さも私の魅力のひとつです(笑)。
三谷幸喜 Koki Mitani
1961年、東京都出身。日本大学芸術学部演劇学科在学中の1983年に、「東京サンシャインボーイズ」を結成。80年代後半から深夜枠のドラマ等で注目され、90年代より自身が脚本を手がけたテレビドラマが次々と大ヒットを記録。その後も映画、舞台、ドラマ、歌舞伎と縦横無尽の活躍で、日本を代表するヒットメイカーに。舞台『12人の優しい日本人』(90年〜)、ドラマ『古畑任三郎』(94年〜)、映画『THE有頂天ホテル』(06年)など代表作多数。
青木さやか Sayaka Aoki
1973年、愛知県出身。フリーアナウンサーとして活動、その後タレントの道へ。以降、バラエティ番組やドラマ、エッセイの執筆など幅広く活躍中。近年はYoutubeチャンネル「犬と猫とわたし達の人生の楽しみ方」などを中心に、動物の保護活動にも力を注いでいる。12月にはニール・サイモン作、三谷幸喜演出の舞台『23階の笑い』に出演。
舞台『23階の笑い』
ニール・サイモン・作×三谷幸喜・演出
舞台はアメリカ、1950年のテレビ業界。マンハッタンの高層ビルの23階に構えた事務所に行き交う、テレビマン、人気コメディアン、若手作家たちが織りなす人間模様を、笑いと共に描き出します。1993〜94年にかけてブロードウェイで上演されたニール・サイモンによる『23階の笑い』を、三谷幸喜さんと個性あふれるキャスト陣がどう料理するのか、2020年末を締めくくるにふさわしい、抱腹絶倒の話題作です!
作:ニール・サイモン 演出:三谷幸喜 翻訳:徐賀世子
上演時期:2020年12月5日(土)~12月27日(日)
会場:世田谷パブリックシアター (東京公演のみ)
出演:瀬戸康史 松岡茉優 吉原光夫 小手伸也 鈴木浩介 梶原善 青木さやか 山崎一 浅野和之
企画・製作:シス・カンパニー(TEL:03-5423-5906/営業時間 平日11:00~19:00)
【公式サイト】http://www.siscompany.com/23f/gai.html
【Twitter】@sis_japan
取材・構成/山崎 恵
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