新型コロナ患者に対応する首都圏の病院。写真:ロイター/アフロ

OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本における単位人口あたりの医師数や看護師数は国際的に見て特別に少ないわけではありません。ところが単位人口あたりの病床数だけは特別で、諸外国の3倍近くもあります。つまり、医師や看護師の数は国際平均ですが、同じ人数で常日頃から3倍の患者を担当している計算になりますから、人員に余裕がない状況であることが分かります。

 

コロナ患者の場合、感染対策の必要性から通常の2倍の従事者が必要であり、日常的にまったく余力がない病院の場合、コロナ患者を受け入れたくても受け入れられないというのが現実でしょう。

このような状況になっているのは、医療保険の仕組みや介護制度との兼ね合いなど、制度設計に問題がある可能性が高いのですが、今はそれを議論している余裕はありません。このまま何も対策を打たず、感染者数がさらに増えれば、入院や手術ができなくなる患者が出てくることも考えられますが、一方で、コロナ患者を受けれていない病院では、来院者の減少から人員が余剰になっているケースもあるようです。

民間病院の場合、他病院への出向などを強制することはできませんが、保険診療を行っている病院は公的なお金を受け取っているわけですから、ある程度までは、政府からの要請を受け入れる責任があるでしょうし、多くの医療従事者は、その任務をまっとうしてくれるはずです。つまり、政府がリーダーシップを発揮して十分な予算を確保すれば、人が足りないコロナ病棟にリソースを集中することは物理的に可能であり、そのために公的な医療制度が存在しているともいえます。

医療従事者のリソースを最適化できれば、数字上、まだ患者を受けれる余力はあるという話ですから、皆が病院にかかれないという最悪の事態は回避できると思われます。しかしながら、このオペレーションを実現するためには、トップの強い信念と責任感、そしてリーダーシップが不可欠です。こうしたトップの覚悟抜きに、医療関係者の善意や努力のみに依存し、現場に丸投げするようなことだけはあってはならないでしょう。


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