“理想の資質”がトップ5になかったら、どう考える?


ストレングス・ファインダーを行うと、少なからず「えっ、私こんな資質が上位なの?」という衝撃を受けることになるかもしれません。古屋さんは、自分の資質との向き合い方について、これまでにストレングス・ファインダーを使ってコーチングを行ってきた方たちのエピソードを交えて教えてくれます。

ケース1:「戦略性」が最下位だった部長Bさんの場合

 

「ある企業の製品開発部で部長を任されていたBさんは、資質のうち“戦略性”が34位、つまり最下位でした。戦略性は、目的に向かうための選択肢を想定したり、ゴールへの最短距離を直ちに予測することができるという資質です。その戦略性が低いことがコンプレックスとなり、そんな自分がなぜ部長に? と悩んでいたんですね。Bさんは、“ただ部下たちがやりたいことをできる環境を整えたい、全力で支えたいだけ”だと仰っていて。“それってすごいことですよ!”と言ったら、ハッとした表情をされていました。Bさんの上位資質には、“共感性”や“成長促進”があったんです。その後、長く同じポジションでがんばっていらっしゃるそうです」

 


ケース2:「社交性」が低かった営業マンCさんの場合

 

「ある営業職の男性Cさんは、“社交性”の資質が低く出てしまいました。社交性は、新しい人と出会うことが好きで、人脈を広げることを得意とする資質です。どうりで、自分は飛び込み営業や新規開拓が苦手なわけだ、と。社交性が低いなら、セールスの仕事には向いていないんじゃないか、とまで考えていたんです。でも、Cさんには“個別化”と“親密性”という上位資質がありました。このふたつの組み合わせを持つ人は、相手に対してとことん親身になることができ、一対一の信頼関係を築くことが得意です。強みに気づいたCさんは、見込み客を絞り、一人ひとりの提案に時間をかけることで、営業成績も格段に伸ばすことができたといいます」

Bさん、Cさんの例からもわかるように、ストレングス・ファインダーは自分でも気づいていないポテンシャルを解放するためのツール。自分にとって望ましい資質がないからといって、可能性に制限をかけるものではない、と古屋さんは言います。

「自分らしさを受け入れることが、成功と幸せへの一番の近道です。ストレングス・ファインダーの結果に特定の資質がないからといって、今の仕事やポジション、やりたい仕事に向いていない、ということはありません。自分の資質たちをうまく使いこなして、今の役割で最高の成果を出すにはどうしたらいいか。そこを考えることが重要なんです。
特にトップ5の資質は、自分の脳の中の高速道路のようなもの。Bさんの戦略性、Cさんの社交性のように、下位にある資質を努力によって高速道路化することは、実は統計的に見ても難しい傾向にあります。また、ストレングス・ファインダーは設計上、弱みをあきらかにするようにはできていないので、34位だからといって“ない”わけではなく、“路地”くらいはあるかもしれません。資質の一つひとつに一喜一憂するのではなく、資質を組み合わせて自分を掘り下げていくことで、無限の可能性が見えてくるはずです」