あの『のだめカンタービレ』の作者・二ノ宮知子さんの最新作『七つ屋志のぶの宝石匣』の13巻が2月12日に発売。1巻冒頭に描かれた最大のナゾに迫る展開になったと話題になっています。
「のだめ」は音楽がテーマでしたが、今作は質屋と宝石がテーマ。
前作では、のだめ自身が不思議系でしたが、今作の主人公・志のぶは宝石の「気」を感じられる能力がある「才能が不思議系」です。
プラス、今作は、質屋に宝石を売りに来る人たちのいろいろな事情が描かれ、他人のおカネと家族の関係をのぞき見るようなゴシップ要素もアリ。でもドロドロ感はなく、コミカルに描かれているので、相続問題など深刻なはずのエピソードでもクスッと笑えるようになっています。
作品の舞台は、東京下町にある老舗質屋。その店の娘・倉田志のぶが主人公の一人です。
そして、もう一人の主人公は、高級宝石店の外商で、そのイケメンぶりで女性を惹きつける、顧客という名のファンが多い男、北上顕定(きたがみあきさだ)。
この二人、一見関係がなさそうに見えますが、顕定は志のぶの「婚約者」となっていて、倉田屋に出入りしています。「顕ちゃんは、うちの質流れ品だから」という志のぶ。実は、彼は幼い頃に一家離散した母親に連れられ倉田屋に訪れ、そのまま質入れされて(預けられて)しまった過去があるのです。
彼が覚えているのは母親にかつて見せられた「赤い鳥の形の内包物(インクルージョン)が入っている宝石」。自分の実家はなぜ離散したのか?その秘密を解くため、その石を探し続けています。
これが本作で最大のナゾ。なのですが、見どころはそれだけではありません。
「のだめ」と同じく、アクティブで個性あふれるキャラたち
志のぶは、宝石の「気の状態」を感じられる女子高生。宝石を見るとその「気」が良いかどうかがすぐにわかるため、女子高生といえども、周囲からかわいいとチヤホヤされるというより、「オカルトチックな女の子」という存在に描かれています。
ぶっとんだ才能を発揮するヒロインと、彼女に振り回されてしまう冷静なイケメンの掛け合い。そして、自由奔放で個性あふれる女性ばかりが登場するのが、二ノ宮知子ワールドの真骨頂です。
質屋には、ワケありな人と宝石がやってくる
倉田屋には、ワケありな宝石が日々持ちこまれます。亡くなったおばあちゃんの形見のブルーダイア、嫁からもらったというアウイナイト…客がお金欲しさに持ってくる宝石たちの価値を、志のぶは一般的な鑑定法にくわえ、「気」でも感じ取ります。
そして、彼女が「良い気」を感じた宝石には、持ち主の想いが込もっていることが後にわかるのです。
「残された石には何かしらメッセージがある」
財産として見なされることが多い宝石ですが、本当の価値は、「目に見えない」ところ=持ち主やその石を贈った人、受け継ぐ人たちが込める想いや記憶にあるんじゃないか。志のぶの鑑定を見ているとそんな風に感じます。
常人とは違う才能を発揮してしまう女子と、女性たちにモテモテの王子系イケメンという設定や、クスッと笑えるセリフや白目をむく人物の表情は、「のだめ」から変わらない安定の魅力。
ですが、笑えるだけでなく、宝石をめぐる愛憎渦巻くディープな人間ドラマや、謎解き系ミステリーの要素などをギュッとつめこんで仕立てているところに、「のだめ」からさらに進化した二ノ宮先生の世界を感じられる作品になっています。
【漫画】『七つ屋志のぶの宝石匣』を試し読み!
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『七つ屋志のぶの宝石匣』
著者:二ノ宮 知子
講談社
『のだめカンタービレ』の二ノ宮知子の最新作は「質屋と宝石」。
東京下町の質屋「倉田家」の娘・志のぶは宝石の「気」がわかる才能をもっている。彼女の「婚約者」である北上顕定は、幼い頃に一家が離散し、倉田家に質入れされた。一家離散のカギとなる「鳥の形の内包物(インクルージョン)がある赤い石」を探し続ける顕定と、志のぶの周囲で起きる宝石をめぐる人間ドラマ。
構成/大槻由実子
二ノ宮知子
2001年から連載の『のだめカンタービレ』で2004年に第28回講談社漫画賞少女部門を受賞。同作は、2006年から2010年にかけてテレビアニメ化・ドラマ化・映画化など多数のメディアミックスがされ、一大ブームを巻き起こした。現在は『七つ屋志のぶの宝石匣』を「Kiss」で連載中。