「わたしなんか」「どうせわたしは」⋯⋯ 謙虚なようで、自分を卑下してしまっている言葉。つい心の中でつぶやいてしまっている方もいるのではないでしょうか。
そんな言葉が口癖になっている女性が主人公のコミック『かろりのつやごと』4巻が1月25日に発売されました。本作は、大人の女性をターゲットとしたコミック誌『オフィスユー』で連載中です。過去に、ドラマ化された『斉藤さん』(観月ありささん主演)や『ふれなばおちん』(長谷川京子さん主演)の作者、小田ゆうあさんの新作ということで注目が集まっています。

かろりのつやごと 4』 (オフィスユーコミックス 発行/集英社クリエイティブ)

「あたしなんかを いつか抱いてくれる人がいるのだろうか—」

美味しいものを食べることが唯一無二の楽しみという、太め体型の主人公・花鳥風月(かとりふづき)。でも食べ物だけでなく、男女の恋愛「つやごと」にも興味津々。リアルな経験はしたことがないから、日々、一人で妄想をめぐらせています。

妄想してもナゾは深まるばかり⋯⋯。

そんな彼女が、新しく見つけたビル街の中にある定食屋さん。おいしい朝定食と、そこで働く男子大学生と出逢ったことで、生活がだんだんと変わっていきます。

かま炊きご飯が美味しそうな「和プレート」が人気のお店です。

タイトルにある「かろり」とは、主人公の昔からのあだ名。太め体型をからかわれて「カロリー」と掛けてつけられたもので、彼女自身「ひどいあだ名ですよね」と自虐的に笑いながら言います。
「ベイ◯ックス」のようなインパクトのある体型の彼女は、定食屋でも入るなり目立ち、座る椅子はギシギシと鳴って……。

彼女の大きさにあっけにとられる女性従業員。

けれど、彼女が美しい所作で定食を食べることに、定食屋の従業員たちが気付きます。

かろりが朝定食を味わう姿。「いただきます」のあいさつももちろん欠かさない。

そう、かろりは体型が目を引くものの、毎朝、服装もきちんと整えていて、礼儀正しく、良家のお嬢さんといったオーラを漂わせています。ディテールに注目すると、自分を卑下しているような女性にはとても見えません。

でも、ふとした出来事で「あたしなんか」としきりに言います。この落差こそが、彼女と親しくなった人たちだけでなく、読んでいるわたしたちも気になってしまうポイント。

そんな彼女の外見のインパクトや自己卑下するところをいじることなく、ナチュラルに受け入れていく人物が。それが彼女の妄想の……いや、恋のお相手となる大学生の青井くんです。

「メシがうまい店は信用に足る」と、この店で働き出した青井くん。

彼、人間的にいい男なんです。外見で差別をしないで、まっすぐに物事の本質を見ている。正義感が強く、突発的な事態にうろたえたり迷うことなく瞬間的に動くアクティブさも持っている。ただ、男女の機微には鈍感すぎるのだけど……。これはモテるだろうなーと思っていたら、案の定!です。

同級生女子のアピールもむげなく断る青井くんの疎さ⋯⋯。

定食屋に通ううち、青井くんとのあんなことやこんなこと「つやごと」に繋がる妄想をしてしまうかろり。でも、現実ではなかなか決定的な行動には踏み出せずに……。

「つやごと」というタイトルから、大人の濃厚な恋愛ストーリーかと思いきや、ダイレクトなそういうシーンは登場しないピュアな展開。だからこそ、かろりの妄想や揺れ動く感情といった、内面の「つや」が際立って感じられます。

最新刊4巻では、ついにかろりが動きはじめる?そして、青井くんとの関係は? 「わたしなんか」と思う自分自身を乗り越えようと奮闘する、かろりの恋のゆくえを見守ってみてくださいね。

駆け寄るかろりに青井くんが頬を染める……!?


【漫画】『かろりのつやごと』ヒロインの艶っぽい妄想
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『かろりのつやごと』
小田ゆうあ (著)
オフィスユーコミックス 発行/集英社クリエイティブ

食べることが大好きな女性、花鳥風月(かとりふづき)。太め体型のせいで自分に自信が持てずに、男性や恋愛に縁がない人生を送ってきた。けれど、興味がないわけじゃない。そんな風月がある男子大学生に出逢うことで、ほんとうに欲しいものに気づいていくラブストーリー。


小田ゆうあ
1983年に『週刊セブンティーン増刊』(集英社)にてデビュー。率直な発言で正義感を貫く幼稚園児の母親を描いた『斉藤さん』は2008、2013年に観月ありさ主演でドラマ化。また、家族を大切に思いながらも年下の男性に惹かれていく地味な主婦を描いた『ふれなばおちん』は2016年に長谷川京子主演でドラマ化された。


構成/大槻由実子