顔や体型、服装まで「さえない独身40女」になりきっている!と放送前からネットでざわめきが起きた主演の池脇千鶴さん。そして、放送開始後は、江口のりこさんや草笛光子さんなどキャスト陣の演技にもらい泣きする、と評判のドラマ『その女、ジルバ』。
初回は「オトナの土ドラ」枠での最高視聴率をマークしたことでも話題になりました。
メーカーの本社勤務から倉庫勤務に回されてしまった池脇千鶴さん演じる笛吹新(うすい あらた)が、平均年齢70歳の高齢ホステスバー「OLD JACK & ROSE」で働きはじめ、人生をポジティブにとらえ直していくヒューマンストーリーです。
原作コミックでは、「40歳はもういい年齢(トシ)」という日本社会の”呪い”に浸かっていた主人公の変化と、激動の時代を生き抜いてきた高齢ホステスたちの半生が描かれています。
「40歳はもういい年齢(トシ)」という日本社会の”呪い”に浸かっていた主人公
一話冒頭、「人生の残高がずっとマイナスのまま」と自分の人生を振り返る主人公・新。40歳になったばかりで、恋人もいなくなり(当然ながら結婚の予定もナシ)、仕事も本社勤務から「姥捨て」と言われる倉庫勤務に回され、老後が不安になっています。
そんな新が「時給2000円 40歳以上」と書かれた求人のビラに惹かれ、思い切って「BAR OLD JACK & ROSE」の扉を開けるのですが、その時のひとり言が印象的。
”何かしないと。
ここで今までと全くちがう何かをしないと。
あたしは自分の人生を嫌いになってしまう”
その店、「BAR OLD JACK & ROSE」は「40歳はまだまだギャルで若い。」という世界でした。そんな中で見習いホステスとして店に出た新は、常連客から「若い娘」扱いされて思わずニヤニヤがとまらず。それは、これまで「40歳はもういい年齢(トシ)」という日本社会の”呪い”にどっぷり浸かっていたからこそです。
それから昼は倉庫勤務、夜はホステスという二足のわらじをはじめる新。昼は、自分より年上の社員から「オバサン」と呼ばれる日々が続きます。けれど、ある日「BAR OLD JACK & ROSE」のホステスにこう言われます。
“わたしたちあなたに教えたり話したりが楽しいのよ
40歳なんて伸びざかりなんだと思ったわ。”
そして、「40過ぎたら女の一軍落ち」という日本社会の価値観からだんだんと抜け出し、「40歳ってまだまだ若い」と思えるようにまで変わっていく新。枯れかけた花がどんどん息を吹き返していくようなその姿に元気をもらえます。
「過去を乗り越えて、ふたたび立ち上がり光輝く」。女性たちの”再生”がテーマ
そして、ホステスとして一人前になっていく新を見守る「BAR OLD JACK & ROSE」の高齢ホステスたちは、あけすけなようで、相手の心を思いやる気持ちとサービス精神にあふれている女性たちです。
話が進むごとに、彼女たちと「BAR OLD JACK & ROSE」の伝説のホステス・ジルバの半生が、徐々に語られていきます。境遇はそれぞれ違えど、戦前戦後の激動の時代を必死に生き抜いてきた彼女たちは、これまでの人生で必ず何かを失っていることがわかってきます。初めての恋人、親や子ども、故郷…。
中でも壮絶といえるのが、ドラマでは草笛光子さん演じる、くじらママ。少しずつしか明かされない回想の途中には、こんな切実な独白が。
“誰にも話さず墓まで
持って逝きたい話もあるわ。”
そして、新にも背負うものがありました。彼女は福島県会津若松市の出身。東日本大震災・福島第一原発事故の被災地をふるさとに持つ者だけが知るもどかしさと切なさを感じながら、東京で過ごしています。
この作品が、東日本大震災からちょうど10年目にドラマ化されたのも、きっと意味があることなのでしょう。
「過去を乗り越えて、ふたたび立ち上がり光輝く」。女性たちの”再生”がテーマになっている『その女、ジルバ』。まずは第一話を読んでみてください!
【漫画】『その女、ジルバ』の一話を試し読み!
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『その女、ジルバ』
著者:有間しのぶ
ビックコミックス/小学館
大手スーパーの倉庫で働く、人生崖っぷちの独身40歳・笛吹新(うすい あらた)が、平均年齢70歳の高齢バー「OLD JACK & ROSE」で見習いホステスになり、踊って歌って笑いながら忘れかけたものを取り戻していく。その店にはかつて、伝説のママ・ジルバがいた。キャッチコピーは「女性たちの人生賛歌が、時代と国境を越える!!」
有間しのぶ
現役女子高生時代に『ヤングマガジン』誌上でデビュー。女性誌、青年誌、ギャグ4コマなど多彩なジャンルのほか、文筆業でも活動している。
代表作は『モンキー・パトロール』『本場ぢょしこうマニュアル』『灼熱アバンチュール』。2021年1月にドラマ化された『その女、ジルバ』で第23回手塚治虫文化賞大賞受賞。
構成/大槻由実子
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