津田沼駅北口前にある「津田沼パルコ」。写真:マリンプレスジャパン/アフロ

ファッションビルを運営するパルコが、「津田沼パルコ」と「新所沢パルコ」2店舗の営業終了を発表しました。コロナ危機の影響もあると思いますが、閉店の理由はそれだけではありません。近年、私たちの消費環境は大きく様変わりしており、コロナ危機がその変化をさらに加速しているようです。

 

津田沼のパルコと新所沢のパルコは、どちらも駅前の顔として長年、地域の住民に親しまれてきました。パルコによると両店とも、駅周辺や郊外の開発が進み、競合店舗が増えてきたことが閉店の理由とのことです。競合店舗が増えたことが直接的な理由であるのはその通りなのでしょうが、背景には社会のIT化による私たちの消費行動の変化があると考えられます。

これまでの時代は、都市部で仕事を持っている人は、電車で通勤するのが標準的でしたから、仕事の行き帰りには必ず駅を通ることになります。仕事を終えて最寄りの駅に降りた人の一部は、駅前にある店舗で買い物をして家に帰ることが習慣化していたはずです。

最近は少なくなりましたが、主婦など仕事がない人でも、昼間に駅前に出かけて買い物をし、ついでにお茶や食事をして帰ることがひとつの行動パターンとなっていました。何度も外出するのは面倒ですから、ひとたび外出した時には銀行や郵便局など複数の用事を済ませようと考えます。

つまり駅前にあるファッションビルや飲食店、さらに言えば銀行などの金融機関なども、すべてこうした行動パターンに沿って作られていたわけです。一連の消費行動を根本的に変えるきっかけになったのがネット通販です。

一部の利用者はダラダラとネットを閲覧して気まぐれに買い物をするかもしれませんが、ネット通販では多くの人が欲しいモノを積極的に探して購入します。amazonなど一部の事業者はITを使った高度な推奨システムを提供しており、購買履歴などから利用者が欲しそうなモノを次から次へと表示してきます。これによって、ついついたくさん買ってしまうことになってしまうのですが、欲しいものを買っているという意味では大きく変わりません。

外出の際にまとめて用事を済ませる必要があり、その中に買い物も含まれているという従来のライフスタイルでは、訪れた店にあるモノの中から選択するという考え方に近くなります。一方、ネットの場合には、無限に存在する商品の中から自分が欲しいモノを探し出すという感覚ですから、同じ買い物でもずいぶんとスタンスが違います。

 
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