過度な競争社会として知られる韓国で、ここ数年ブームとなっているのが「癒やし」。その一環として心理学や脳科学への関心が高まり、書店でも大ヒットを記録しています。中でも特に関心を集める「マインドフルネス」のジャンルで、大ベストセラーとなっているのが『ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。寂しくなくて疲れない、あなたと私の適当に近い距離』。
その理由を「これまでの「全部大丈夫」という漠然とした慰めに嫌気がさした人々が、もっと科学的で明瞭な解決方法をさがそうとしているのだと思います」と語るのは、イラストレーターで元美術療法士の著者ダンシングスネイルさん。
「のんびり屋で感じやすく、心の傷を引きずりがち」で、自身のケアのために文章を書き始めたという彼女。そこに書かれた他者との絶妙な距離のとり方、「孤立」ではない孤独との付き合い方、ストレスを溜めない考え方は、コロナ禍で心の平穏を保つためのヒントが満載です。
ダンシングスネイル
イラストレーター、イラストエッセイ作家。ソウルの弘益大学でデジタルメディアデザインを学んだが、長い苦悩の末にデザイナー体質でないことを確信し、その後、絵と心の相関関係に興味を持ち、明知大学未来教育院の美術心理カウンセラー課程を修了した。カウンセリングセンターで美術療法士として働くうちに、まずは自分のケアからしなければならないことに気づき、再び絵を描き始めた。著書に長年の無気力症克服の記録を綴った『怠けてるのではなく、充電中です。』(CCCメディアハウス)があり、『死にたいけどトッポッキは食べたい』(ペク・セヒ著、山口ミル訳、光文社)、『ねこの心辞典』(未邦訳)など多数の本のイラストを描いた。
「ほっといて欲しいけど、ひとりはいや」という気持ちは、ちょっと口には出しにくいですが、多くの日本人が共感すると思います。ご自身はこの気持に、どうやって折り合いをつけたんですか?
特別なきっかけがあったというよりは、いろいろな経験を通じて自然とそうなっていったように思います。私は幼い頃から一人でいるのが好きでした。繊細で、傷つくと長い間溜め込んでしまう性格で、子供ながらに「人生はどうせ一人」と考えていた時期がありました。でも、さまざまな人生経験を重ねるうちに、他者とともに生きるために努力することも必要だなと思うようになったんですよね。他人から与えられる苦しみと同じだけ、他人から与えられる嬉しいこともあるのですから。
「他者とともに生きるために努力」の過程で、人付き合いの苦手意識を克服する訓練のようなものをされたのですか?
なにか人間関係で嫌なことがあったり、難しい状況に直面したりした際に、少しずつでもいいから、自分ができる分だけ相手に心を開き、ぶつかってみることですよね。そういう過程を経て、他人に対して過剰に期待せず、自分と違う点を理解しようとすることを繰り返すうちに、人間関係は以前より楽になったように思います。最近では「人は一人では絶対に生きていけない」という事実も受け入れるようになりました。
人間関係に期待しすぎないことが大事?
そもそも人間関係から得るものは満足感だけではありません。困難だってある。それは全世界の人に共通しているのではないかと思います。でも人間を幸せにしてくれるものって、人間関係だけではないですよね。基本的な衣食住の安定、家族や友人の存在、仕事、趣味、健康など多くの要素によって支えられているものです。例えばそれらが、人生を回転させる車輪の一部分だと想像してみて下さい。たとえどこかが少し欠けていたとしても、ほかの部分で支えられれば車輪はとりあえず回ります。つまり、すべてが完璧に満たされていなくても、他のもので埋めながら生きていくことだってできるということです。
人との関係に依存しすぎない方法
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