「精一杯演じさせていただきます」爽やかに、彼は言った

 

『天外者』の前半は、五代の知られざる若き日々が紡がれます。同い年である土佐の英雄・坂本龍馬(演・三浦翔平)と競い、のちに大商人となる岩崎弥太郎(演・西川貴教)、日本国初代の総理大臣となる伊藤利助(のちの博文。演・森永悠希)とも友情を深める青春群像劇には、長崎の遊郭の女性・はる(演・森川葵)との悲恋も、しっとりと描き込まれていますが……。

 

「実は、私が最初に書いた脚本では、『天外者』は恋愛ものにわりと軸が置かれていました。侍という特権階級だった五代が、貧しさから遊女となった女性と恋をすることで、誰もが夢を見れる国にしたいという志(こころざし)を立てる……そんなストーリーだったのですが、田中監督と話し合い、その志をもっと明治という新しい国のために役立てる物語にしようと。最終的に、青春活劇の形になりました」


実は小松さんは、一度だけ映画の撮影現場を訪れており、その折、五代に扮した三浦春馬さんと言葉を交わしたのだとか。その様子を、打ち明けてくださいました。

「撮影していたのは、明治維新後、五代がはじめて洋装の姿になった場面でした。『よろしくお願いします』と言った私に、三浦さんは『精一杯演じさせていただきます』とご挨拶してくださったんです。すごく爽やかな笑顔でした。爽やかなだけでなく、彼は切ない表情もすごくいいんですよね。ノベライズ『天外者』の表紙(カバーを外した本体の表紙)に使われている写真は、映画の中で私がとても好きな場面のもの。洋行し、遠いイギリスではるの面影を探す五代の顔は、まさに愛する女性を想うときの表情で、すごくいいんです」

 

 

→三浦春馬さんが映画『天外者』に与えた影響は、他にも……。小松江里子さんのインタビューは、後編に続きます。

 

<作品紹介>
『映画ノベライズ 天外者(てんがらもん)』

講談社 1485円(税込) 

薩摩から日本を、そして世界を見ていた少年は、やがて天才的経済人となって国を動かす一人となる。明治の知られざる立役者・五代友厚の青春と人生を描いた一大青春活劇映画、待望のノベライズ版。(168P・巻頭カラー8P/未公開カット含む)

撮影/赤松洋太
取材・文/大谷道子
構成/山崎 恵
 
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