――その後、1995年からドラマ『金田一少年の事件簿』から怒涛の日々が始まったわけですよね。

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『金田一』は、世の中のたくさんの人に顔と名前を知っていただいて、仕事が大きく広がっていくきっかけになったターニングポイント的な作品です。

中学の春休みにスペシャルを撮って、そこからシリーズ化されて、最後は映画にもなって。高校の3年間かけてやっていた作品なので、やはり印象深いですし、いまだに「『金田一』観てました!」って言ってもらうことはありがたいなと。
その反面、その時代を全く知らない人もいるから、世代によって反応が違うのが面白いなと思います。

 


――『金田一』は社会的現象になったくらい、人気がありましたよね。もう15年以上前ですが、今でも覚えています。

当時は作品の人気とともに自分の存在も独り歩きしているみたいな感じがして、不思議な感覚でした。
覚悟もないままに仕事を始めて、「こんな風になりたい」というイメージがあったわけでもないのに、「これはもう引き返せないな」、と思ったんですよね。
忙しくなっていくことや、犠牲にしなきゃいけないものについて考えると、気持ちの折り合いが全くつかなかったというか。

今思えば面白い仕事をたくさんやらせてもらって「ラッキーだったじゃん!」って突っ込みたいけど、当時は自分のキャパを完全に超えちゃっていたんだと思います。私が働くことによってたくさんの人が動いて、大きな責任が伴う。
お芝居の課題をクリアして、「次も頑張ろう!」っていう純粋な気持ちだけで立ち回っていくのは、もう難しいんだなって実感したというか。

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――仕事が楽しい、面白い!だけでは済まなくなっていくのって、キャリアとしては3、4年くらいから。仕事を始めた年齢は違いますが、まさにそんなタイミングだったんですね。

『素晴らしきかな人生』の時に演じることの楽しさや難しさ、奥深さみたいなものを肌で体感して、そこからラッキーなことにお仕事がコンスタントに繋がっていく機会に恵まれました。

どこに行っても一番年下で新人だったから、先輩たちのお芝居を見ているとワクワクするんですよ。上手い人とお仕事をして、ただひたすら面白いっていう気持ちだけでやっていたから、それを仕事にしてお金が付随してくることに対しての戸惑いが常にあった。
本当に世間知らずですよねぇ。

東京で育ってずっと実家暮らしだったので、一番仕事をしていた時期でもひと月のお小遣いは5000円だったけど、私はそれでよかったと思っています。好きな服が買いたくて、バイトしたいなぁ……って常に思っていたけど(笑)。

――お芝居の楽しさを追求したい気持ちと、それが職業になっていくことに対する違和感に折り合いをつけることが難しかったのかもしれませんね。

知らないことを知りたい!っていう純粋な気持ちのままでやってきて、次から次に新しい仕事にも恵まれて。
好きなことを仕事にするって、幸せなことでもあり、不幸なことでもあるなと。

――当時、テレビで観ていた私たちは、ともさかさんは憧れの存在でしたけど、大人になった今考えると、10代で学校に行きながら、第一線で仕事する、って特殊な環境ですよね。

堀越の芸能科にはいろんなジャンルの芸事に関わっている人がいるから、もちろん皆勤賞の人だっているわけですよ。
私は学校にちゃんと通えて、年相応の時間を過ごせることを素直に羨ましく感じていたけど、そういう感覚を逆に疎ましく思っていた人もいたかもしれない。私の無自覚な振る舞いが、どこかで誰かを傷つけたりしていたんじゃないかなと思ったりして、思い返すと少し胸が痛いです。

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でも同級生の水樹奈々ちゃんと大人になってから再会して当時のことを話していたら、「やっぱり特殊な環境だったよね」って。20年くらいたって答え合わせをして、シェアしていた感覚が一緒だったことがわかって、少しホッとしました。大人になるっていいものですね。

――やりたいことを仕事にしよう、ってよくいいますけど、楽しいだけでなく、同時にしんどさもある、っていうことはどんな職業でも仕事の本質かもしれません。
それを10代ですでに体感していたとは……。

「明日こそ仕事を辞めるって言おう」って毎日思っていた時期もあったし、精神的にも肉体的にも限界かなと思うこともたくさんありました。
でも私が10代の頃はSNSなんて身近に存在していなかったから、そういう匿名の言葉に大きく振り回されずに済んだのは、ラッキーだったなと思います。

結局私の場合は、自分自身の中での葛藤というか、理想と現実の間でどう折り合いをつけてやっていくか、に尽きるのかもしれない。
経験値の低さや若さ故の間違いや失敗もたくさんあるし、悔やんでることもたくさんある。
私は社会を知らなすぎるんだと思います。
今でも夢ばかり見ていて、真っ直ぐな気持ちで相手や環境を見つめ過ぎてしまうから、ひとりで勝手に傷ついて疲れ果ててしまう。
今は様々な出来事に対して感情移入しすぎないように気をつけています。

この一年で仕事まわりの環境も大きく変化したんだけど、役者の仕事は孤独だなぁって改めて実感しています。
それは後ろ向きなものではなく、それが役者という仕事なんだと思います。
私は暮らしでも仕事でも、向き合う相手を心の底から信じたいし、どうしたって信じてしまうから、色々と面倒なことになるんだけど(笑)、でも相手に向かうエネルギーみたいなものを手放してしまったら何が残るんだろう?
いつだって原動力は、相手を思う気持ちだなと。

孤独を価値ある自由に変化させるために、私は仕事をしているんだと思います。

撮影/若木信吾
スタイリスト/斉藤くみ
ヘアメイク/伴まどか
取材・文/細谷美香
構成/片岡千晶(編集部)
この記事は2021年3月22日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

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前回記事「ともさかりえが語る“沼”にハマる喜び「初の趣味・ミュージカル鑑賞でときめきが蘇る」」はこちら>>

 
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