美智子さまの終い方「30年前、即位の時の異例の発言」とは?

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かなり前から準備する必要がある、というご認識

写真/宮内庁提供

「即位礼正殿の儀」において、新しい天皇陛下は国の内外に即位を広く知らしめました。昭和天皇の崩御からすでに2年近くの歳月が流れていました。

 

そして、この日から新天皇陛下と美智子さまは「平成流」と呼ばれるさまざまな改革に本格的に取り組まれることになります。

その数日前の11月上旬、新しい天皇陛下は「即位の礼」を迎えるにあたって、

「喪儀と即位に関する行事が同時に進行するのは避けたい」

と述べられたといいます。

当時の側近の日記によると、昭和天皇の喪儀は亡くなる半年ほど前の、体調がかなり悪化した時期になってから、側近が喪儀の具体的な相談を始めたといいます。

しかし、それでは前例のままに踏襲するのが精一杯で、「国民の生活への影響が少ないのが望ましい」という天皇陛下(上皇さま)と美智子さまのお考えに反することになってしまいます。
そのため、喪儀についても早くから取り組まなければならない課題ととらえられたのです。


天皇家が初めてのことをするためには、多くの関係各所と調整をしていかなければなりません。例えば、天皇陛下の側近には、ほかの省庁との交渉や公式行事などを取り仕切る表のトップと、身近にいてお仕えする裏のトップがいます。

表のトップは宮内庁長官で、毎月二回、記者会見をする広報担当でもあります。直接発言をすると影響力が大きすぎる天皇陛下に代わって、国民に向かって説明をする大きな役割を持っています。裏のトップは侍従長で、常にお傍にいてご相談相手をつとめます。

こういった周りの人々の理解を得たのちに、国ともすり合わせをしていく必要があるのです。何かを変えるためには、長い時間がかかる。
言い換えれば、かなり前から慎重なご準備を重ねていく必要がある――。

ご成婚から30年ほどのときが経ち、そういった流れも当時のお二方は十分ご存知だったのです。
 

文/高木香織
ヘッダー写真/JMPA/光文社

 

 

『美智子さま いのちの旅 ―未来へ―』
講談社 価格1650円(税込)
渡邉みどり著

30年に渡る、上皇さまと美智子さまの最後の大仕事「終い方」に向けたあゆみをまとめた一冊。昭和天皇崩御と喪儀、即位といった一連の儀式のためにかかる莫大な経費と国民の自粛による経済への大きな影響に驚いた美智子さまは、終い方に向けての取り組みを始めました。家族会議を開き、国会を動かして法改正し、墓陵のかたちを決め、上皇さまの生前退位を実現したのです。著者は、日本テレビ放送網のプロデューサーとして美智子さまのご成婚パレードを取材し、昭和天皇の大喪の礼では総責任者として陣頭指揮をとった皇室ジャーナリストの渡邉みどりさん。国民にとっても学べることが多い内容です。


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第3回「30年の年月を経て...上皇陛下と美智子さま「生前退位の日」一礼に込めた想い」>>
第4回「陛下と美智子さまが自ら準備する葬儀とお墓「400年ぶりの火葬で国民に負担なく」」>>
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