「乳がんでも産みたい」専門医が語る、乳がん治療と妊娠・出産のリアル_img0
 

「乳がんに、絶対という予防法はありません」と話すのは、乳腺専門医の緒方晴樹先生。乳がんは意図せずやってくるもの、それは仕方がないとしても、長期にわたる治療が、時に人生設計を大きく狂わせてしまうのも事実です。将来、子どもがほしいと強く願う方はどうすればいいのでしょうかーー? 20年以上にわたって数多くの乳がん患者さんに向き合ってきた緒方先生に、乳がんと妊娠・出産のリアルについてお聞きします。

 


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日本人に多い「高濃度乳腺」とは?男性にも起こりうる胸の病気の話>>


乳がんを発症した場合、妊娠・出産には影響しますか?
→影響しますが、すぐに諦める必要はなし。主治医と対処法を探ってみてください。


残念ながら、影響は大いにあります。以前にもお話した通り、乳がんと女性ホルモンは密接な関係にあり、治療には女性ホルモン量の調整が不可欠だからです。女性ホルモンをコントロールする治療は長期に及びます。妊娠・出産の適齢期を超えて治療を続けなければならないことが多いのです。また、抗がん剤治療の影響で卵巣の働きが低下し、排卵しなくなることもあります。

妊娠するために必要な能力のことを「妊孕性(にんようせい)」と言いますが、若い乳がん患者さんは特に、治療を始める前に妊孕性への影響について様々な意思確認を行うことになるので、精神的な負担も大きいと言えるでしょう。

とはいえ、妊娠・出産を完全に諦める必要はありません。パートナーがいて、時間的な余裕がある方――つまり、乳がん治療が一段落した後に出産可能な年齢の方は、「受精卵」を作って凍結保存しておくという方法もあります。
パートナーがまだいない方は、卵子を凍結保存する方法もあります。採卵した卵子を凍結する、臨床試験の段階ですが卵巣の一部を切除して凍結する、などいろいろな方法があります。受精卵を凍結保存できた場合でも、子宮に戻して妊娠を継続させるのは容易ではありません。この分野は不妊治療の先生の専門分野ですので、良い先生を見つけて、相談してと、乳がん治療を開始するまでの時間との戦いになります。

乳がん治療は、将来の家族計画に影響を与える可能性があるのは確かですが、乳がんを治療したのち妊娠・出産することで、がんが再発しやすくなるというデータはありません。私の患者さんの中にも、乳がん治療後に子どもに恵まれた方はたくさんいらっしゃいます。乳がんと診断されたからといってすぐに諦めず、治療を始める前にぜひ主治医にいろいろ相談してみてくださいね。

 
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