ある日突然、胸にしこりが...年1回の検診では見つけにくい「トリプルネガティブタイプ」乳がんとは_img0
 

がんは“若いと細胞が活発なぶん、進行のスピードが早い”なんていう話をよく聞くかもしれません。しかし、乳腺専門医の緒方晴樹先生によると、進行スピードは年齢云々の前に「がんのタイプ」が大きく関係していると言います。「乳がん」最終回となる今回は、ゆっくり進行する乳がんと、早く進行する乳がんにはどんな違いがあるのかについてお聞きします。

 


前回記事
「乳がんでも産みたい」専門医が語る、乳がん治療と妊娠・出産のリアル>>


乳がんの「ステージ」って?
→検診で多く発見されるのは、浸潤がんのステージⅠ〜Ⅱです。


第1回でも触れましたが、がんの「ステージ」とは、がんがどの程度進行しているかを示す指標のようなもの。ステージは大きく0〜Ⅳ期に分けられ、浸潤がんと非浸潤がんの違い、しこりの大きさ、わきの下のリンパ節への転移状況、他の臓器への転移の有無などから分類されます。数字が大きくなるほど、乳がんが進行していることになります。

非浸潤がんはステージでいうと「0」ですが、がんが乳腺の内側に止まっていることからしこりの自覚がないことも多く、検査を受けるというアクションにつながりづらいところがあります。そのため、乳がん検診で発見されるのは、浸潤がんのステージⅠ〜Ⅱの場合がもっとも多いですね。

乳がんにも種類はあるの?
→4つのタイプがあり、進行スピードや治療法に違いがあります。


乳がんの治療を行う際には、浸潤がんや非浸潤がんだけでなく、「サブタイプ」といって、がんの性格を見分けることが大切です。それによって、治療方法も変わってきます。サブタイプは以下の4つに分けられます。

①ルミナールAタイプ
女性ホルモンのエストロゲンががんを育てるタイプ。電車で例えるなら、鈍行の各駅列車のようなものです。ホルモン療法が有効で、化学療法の効果が少ないことがわかっています。原則、ホルモン療法単独で治療を行います。ただし、リンパ節への転移が4箇所以上認められる場合などは悪性度が高いため、化学療法も検討することになります。

②ルミナールBタイプ
女性ホルモンのエストロゲンががんを育てますが、他の性質もからんでいるタイプです。ホルモン療法が有効ですが、それだけでは不十分な可能性があり、化学療法を追加することも検討されます。HER2陽性のルミナールタイプもここに入ります。

③HER2(ハーツー)タイプ
女性ホルモンとは無関係で、「HER2」というたんぱくががんの成長と関係しているタイプ。トラスツヅマブやペルツヅマブという治療薬が非常に有効で、原則として化学療法とこの2つの薬の組み合わせで治療を行います。

④トリプルネガティブタイプ
女性ホルモンやHER2たんぱくとは無関係なタイプ。化学療法が必須です。トリプルネガティブタイプの場合、ほぼ全ての患者さんが手術前から化学療法を開始します。このトリプルネガティブタイプのがん進行スピードを例えるなら、特急列車のようなイメージとなります。

このように、乳がんの治療を決める際には針生検などを行い、ホルモンの影響を受けるタイプか、ホルモンは関係ないタイプか、HER2という特殊なたんぱくを持っているかなどを必ず調べることになります。

 
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