現在放送中のドラマ「レンアイ漫画家」(フジテレビ系)。《漫画一筋で恋愛下手なレンアイ漫画家と“ダメ男ホイホイ”と呼ばれる崖っぷちアラサー女子、そんな恋に不器用な二人の、笑えて、ほろっとくるハートフルラブコメディー》というコピーで、天才少女漫画家・苅部を鈴木亮平さんが、苅部からマンガのストーリーづくりのために「恋愛しろ」と迫られる久遠を吉岡里帆さんが演じています。このドラマの原作は、2010年から11年にかけてモーニングで連載されていた同名作品。ドラマでは少女漫画家・苅部が主人公で、無職になったばかりの久遠の弱みにつけ込んでガンガン振り回していきますが、原作は違ったストーリー展開になっています。
葬儀社で働く22歳の久遠あいこはある日、高校時代に好きだった先輩の葬儀を担当することになってしまいます。20歳でデキ婚したことは知っていたものの、妻に先立たれ、挙げ句先輩本人も滑って転んで亡くなってしまったのです。涙をぐっとこらえていたところ、先輩の親族が揉めているのに気づきます。先輩の子どもは小学2年生のレンくんという男の子なのですが、両親が2人ともいなくなってしまった今、誰が面倒を見るかという話をしていたのです。
先輩には兄がいたので、子どもの面倒を見たくない親族は、一番近い血縁の兄・苅部清美に「あんたの甥っ子だろ!」と、押し付けようとしていました。苅部は親族に向かって「指示すんなよ馬鹿が」と吐き捨てて帰ろうとします。久遠は居ても経っても居られなくなり、「子供が嫌いなのは結構ですけど、今あの子の前で言うことじゃないんじゃないかな」と言い放ってしまいます。
当のレンくんは葬儀場から姿を消しており、久遠たちが慌てて探し回ると、木の上に登っていました。大人たちが自分のことを押し付け合っているのに嫌気が差して、逃げ出していたのです。久遠は急いで木に登り、レンくんを助けようとしますが、足を滑らせて木から落ちそうになります。そこで久遠を助けてくれたのが、レンくんの遠縁を名乗るメガネ姿の男性。彼は久遠に、今後のことをいろいろ聞きたいから葬儀の後に時間をとってほしい、と言ってきました。
久遠が仕事を終え、車で送ってくれるという男性の好意に甘えて同乗すると、彼は「おいくつですか今」「お付き合いしてる人はいるんですか!?」「僕なんかダメですよねぇ?」などと矢継ぎ早に話しかけた上に、突然、久遠に襲いかかってきたのです。
なんとか危機を回避した久遠が、メガネ姿の男性に連れて行かれたのはとある豪邸。昼に葬儀場で見た先輩の兄・苅部の家で、レンくんもここにいるといいます。なんで急に襲われたのか苅部に説明を求めたところ、苅部は子供を引き取るから、その引き換えに「俺の下僕になれ!」と言い放ちます。
久遠からすれば意味がわかりません。密かに思いを寄せていた先輩の子どものことは心配ですが、いきなり謎の男性に襲われ、その上、子どもの面倒を見てほしければ言うことを聞けと、一方的に交換条件を提示されて、承諾するわけがありません。苅部をひっぱたいて、レンくんをこんな家に置いておけないと判断した久遠はレンくんを探します。あるドアをあけたところ、そこは苅部のアトリエだったのですが、中を見てしまった久遠は部屋からも家からも追い出されてしまいます。
あんな人たちに二度と関わりたくもないと思いつつも、レンくんが心配な久遠は、翌日も苅部の家を訪れます。昨日、久遠を襲ったメガネ姿の男性は漫画編集者・向後で、苅部は「銀河天使」という大人気作品を手掛ける漫画家だということが判明。二人は作品の話作りのために、久遠に恋愛をしてもらい、その過程を教えてほしいというのです。ネタ作りのために男性と付き合うという無茶振りに反発しますが、やっぱりレンくんのことが気になってしまい、その申し出を受けて立つことに。
物語は、かなり変わり者の苅部と向後の荒唐無稽な恋愛ミッションに振り回される久遠を中心に展開しますが、男性であることを隠して、女性名で執筆している苅部のことを探ろうとするライバル女性漫画家の金條カレン、レンくんの同級生、久遠が恋愛ミッションのためにアプローチした男性、久遠の姉など、アクの強いキャラが次々と現れます。久遠も、ミッションのためと言いながらいろんな男性との出会いを楽しみつつ、自分の恋愛観や結婚観を見直す機会になります。また、20年近く、向後以外の人と接点を持たず漫画の執筆に専念してきた苅部は、人を全く寄せ付けない野生動物のようなキャラクターなのですが、久遠の恋愛話や小学生のレンくんなどとの交流を通して、少しずつ影響を受けていくようです。
漫画のネタのために恋愛しろ! という荒唐無稽な話ではありますが、ストーリーがどこに転がっていくかわからない、ジェットコースター的な展開が小気味よく、あっという間に読んでしまいます。原作は5巻で完結しているので、現在放送中のドラマとの違いを比較して楽しむのもよし。それにしても、不動の一位を何年もキープしていて、苅部がすべてを捧げて執筆している「銀河天使」、どんな漫画かものすごく気になります!!
『レンアイ漫画家』
山崎紗也夏 原案協力・西田大輔(AND ENDLESS) 講談社
私の恋には理由がある──
久遠あいこ、葬儀屋に勤める22歳。彼女は昔大好きだった男の葬儀で、その兄、他人を見下す男・清美(きよみ)と、愛想のない子供・レンと出会う。
あいこはお節介で、レンの叔父にあたる清美に身寄りのなくなってしまったレンを引き取ってほしい、とお願いした。清美はとんでもない条件を突きつける……
「オレの下僕になれ!」
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