「発売前から話題沸騰!」とうたわれて世に出る本はたくさんあります。しかし今、もしかしてビッグウェーブが起きる瞬間に立ち会っているのかもしれないと予感させているのが、4月に発売になったばかりの一穂ミチさんの新刊『スモールワールズ』(講談社)です。
読んだら誰かに語らずにはいられない!
「この春刊行予定で、ぜひ読んでもらいたい小説がある」と担当編集者からゲラ(完成前の原稿)が送られてきたのは年明けのこと。少し寝かしていた言い訳をするわけじゃないのですが(いや、完全に言い訳なのですが)、この本紹介のコーナー「手のひらライブラリー」やPodcast「真夜中の読書会」の連載を担当している私のデスクには、ありがたいことに社内のほか、多数の出版社から新刊のお知らせやゲラが届きます。
担当編集者の熱のこもった推薦に「これはしっかり読まねば」と思っていたところ――
久しぶりにLINEをくれた後輩が、
「ところで、一穂ミチさんは読みましたか?」
文芸編集者のメールの最後に
「一穂ミチさんって知ってますか?」
エライ人たちとの会議の帰りに、
「今度すごい小説が出るんだけど、川端、読んだかな。BL小説界ではかなり名の知れた一穂ミチさんっていうね……」
と、会う人、会う人が言うのです。
ミチミチミチミチ……みんなしてなんなのさ!?
すぐ読みますって!!
となって、すぐ読んだら、
「一穂ミチさんの『スモールワールズ』読みましたか?」
と誰かに言いたい。
アタシもそっち側に回れた嬉しさ、すごい作品に出会った嬉しさで、すぐにでも誰かに言いたい衝動が抑えきれない本だったのでした。
『スモールワールズ』は、ある6つの家族を描いた短編集です。良好な夫婦関係を装いながら鬱々としていた主婦と中学生男子の交流を描く「ネオンテトラ」、兄を殺された妹と兄を殺した服役中の男との往復書簡「花うた」、10年以上ぶりに“意外な形”で再会した父と娘を描く「愛を適量」など、人生思い通りではない人々の喜怒哀楽を丁寧にすくいとる連作小説集になっています。
その中に収録された短編「魔王の帰還」が「アフタヌーン」にて、なんと早くもコミカライズ! その1話を丸ごと無料公開するとともに、見どころを解説します。
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