中村:例えば、50歳の方が70歳までのローンが残っていて、先ほどの教育費の確保などが困難になって、リスクを考えたうえで一度、完済時期を80歳まで延長したとします。

教育費が落ち着いて、繰り上げ返済をがんばって、完済時期を当初の70歳よりも短く67~68歳くらいまでに戻したとしても注意が必要です。

A:そっか、60歳で定年を迎えていて、まだ住宅ローンがあったら大変だ。

 

中村:そうなんです。そのあたりも考えておく必要があります。
また、繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つのパターンがあります。「期間短縮型」は、毎月の返済額は変わりませんが、返済期間が短くなるパターンで、「返済額軽減型」は、返済期間は変わりませんが、毎月の返済額が下がるパターンです。

月々の返済の負担を減らしたいなら、後者の「返済額軽減型」を選びたいところですが、金融機関によっては、「期間短縮型しかできない(返済額軽減型は選べない)」というケースがあるので要注意です。
住宅ローンの見直しをする際には、先々の繰り上げ返済の可能性を考えたうえで、返済額軽減型が可能かどうかも含めて、慎重に金融機関を選ぶ必要があります。

A:目先のことだけ考えていてはいけないのですね。知らなかった……。

 

中村:また、ご相談者さんには、余裕のある貯蓄がどれくらいあるかもお聞きしています。もし、当面使う予定がない貯蓄があれば、例えばボーナス返済分だけその貯蓄で繰り上げ返済をするという手もあります。

それ以外にも、60歳以上の方なら「リバースモーゲージ」という方法もあります。自分の家を担保にして、将来的には家を売る約束のもと、お金を借りる融資制度です。
一定期間、月々の支払いが「利息だけ」で済むので、家計がどうしても苦しくなったときに、一つの選択肢となります。

A:はい、以前ミモレの記事を読みました! 私は今45歳ですが、60歳以上の場合はそういう方法もあるんだなあと驚いて……。

中村:はい、40代なのか、60代なのかという具合に、年齢によって選択肢が変わってきますね。

A:住宅ローンの見直しというと、金利だけを見ればいいのかと思っていましたが、実はそれ以外にもこんなにたくさん考えることがあるんですね。家族と一緒にじっくり考えてから、またご相談に伺いたいです。

中村:そうですね。実際にご相談に来ていただく場合は、このように家計の状況やライフプランについてじっくり伺いながら、ベストな道を探っていきます。

住宅ローンは、単に「金利が安ければお得」といったことだけで判断できるものではありません。団信もありますし、大きな金額で長いお付き合いになるものなので、ご家族のさまざまな状況を考えながら、慎重に考えて見直す必要があるんですよ。
 

取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)

 


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