内臓をぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような激痛...実は子宮だけの病気じゃない「子宮内膜症」とは?_img0
 

「子宮内膜症」という言葉、女性ならきっと一度は聞いたことがあるはず。でも、一体どんな病気なのか、理解している方は意外と多くないかもしれません。なぜならこの病気、病名だけでは想像もつかない驚きの仕組みがあったのです! 「子宮内膜症」について詳しく教えてくれるのは、東京国際大堀病院・産婦人科医の柳田聡先生。聞き手は、2021年に自身のSNSで子宮内膜症であることを公表した、フリーアナウンサーの宮島咲良さん。実は柳田先生、宮島さんの子宮内膜症を治療した担当医でもあります。宮島さんの赤裸々な実体験も交えて語られる「子宮内膜症」について、全10回にわたってご紹介します!

 


「子宮内膜症」ってどんな病気なの?
→子宮の内膜細胞が“子宮以外の場所”に迷い込み、出血と炎症を起こしてしまう病気です。


柳田 聡先生(以下、柳田):まず最初に、「子宮内膜」について少しだけご説明しましょう。子宮内膜というのは、その名の通り子宮の内側を覆っている膜のことです。卵子と精子が出会い、受精卵になり、子宮へと移動して「子宮内膜に着床する」ことで妊娠が成立しますが、子宮内膜はいわば受精卵のための“清潔なベッド”のようなもの。受精卵が着床しない状態が続くと、古くなった内膜は子宮から剥がれて出血を生じさせます。それが毎月の「月経」ですね。

子宮内膜を形成するのが「子宮内膜細胞」と呼ばれる細胞ですが、その細胞が何らかの理由で“子宮ではない臓器”に迷い込んでしまうことがあります。これの何が問題かというと、子宮内膜細胞は女性ホルモンの影響を受け、月経周期に合わせて“出血を生じさせてしまう”ということ。つまり、本来出血すべきでない場所で毎月出血を起こさせてしまうのです。

子宮という“血液の出口”がある月経とは違って、他の臓器には血液の出口がありません。血液は毎月少しずつ溜まっていき、やがて炎症が起こり、様々な症状を引き起こしてしまう。それが「子宮内膜症」という病気なんです。

宮島咲良さん(以下、宮島):自分が「子宮内膜症」と診断されるまで、名前を聞いたことはあってもそれほど詳しくは知りませんでした。病名から“子宮だけの病気”をイメージしていたので、子宮以外のところにも起きる病気だったんだ! と驚いた記憶があります。

子宮にしかないはずの細胞が他の場所に住みついて、月経周期に合わせて出血を起こさせるなんて、改めて考えると怖いですよね。

柳田:宮島さんのようなイメージを持っている方は少なくないと思いますよ。覚えておいていただきたいのは、子宮内膜症にもっともなりやすいのは「卵巣」だということですね。先ほどもお話したように、卵巣は“血液の出口”がありませんから、血液は溜まっていく一方になります。すると卵巣が少しずつ大きくなり、様々な症状を引き起こしてしまうんです。卵巣に溜まった血液はチョコレートを溶かしたようにドロッとしているので、卵巣にできた子宮内膜症は「チョコレート嚢胞(のうほう)」とも呼びます。

宮島:私の場合も卵巣だったので、「子宮内膜症」でもあり、「チョコレート嚢胞」でもあったということですね。

柳田:そういうことです。チョコレート嚢胞と呼ぶのは、あくまでも卵巣にできた子宮内膜症の場合。卵巣の他には、腹膜や卵管など、総じて“女性の骨盤内にある臓器”にできることが多いですね。

 
  • 1
  • 2