累計800万部超のベストセラーとなった「百ます計算」でも知られる隂山英男先生。40年にわたり子どもたちの学力向上に取り組んできた隂山先生ですが、これまで多くの子どもたち、そして親たちと接する中で“学力よりも大切なこと”に気づいたと言います。

今、隂山先生がもっとも伝えたいメッセージを題した新著『子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい』は、学力向上に人生を捧げた教育者としてだけでなく、時に子を持つ父親としての一面をのぞかせながら、「子育ての最適解とはなにか?」を導き出した一冊です。

「子どもの幸せを願わない親はいません。それなら親が今すぐやるべきことは一つ。まずは、親自身が幸せになることです」と隂山先生。親が幸せになるための方法を豊富な事例も交えつつ教えてくれる本書から、今回は特別に「子どもへの心配を手放す3つの具体的な方法」について一部抜粋してご紹介します。

 


受験生の子どもがいても、お母さんは自分のしたいことをしていい


ある仕事で、わが子が東大に行っているというお母さん方に集まってもらい、子どもを伸ばす秘訣を話し合ってもらったことがあります。みなさん非常に朗らかで、笑顔が素敵だったのが印象的でした。

 

そう聞くと、「そりゃわが子が東大生なら、人生は勝ち組決定。ニコニコ笑顔にもなるでしょう」と思われるかもしれません。でもそれは逆です。「わが子が東大に行っているから笑顔」なのではなくて、「お母さんが笑顔でいるから、子どもが伸びやすい」のです。

このことが特に際立ったのは、「東大の受験時代、子どもたちは何時に寝ていたか」という話題になったときのことです。実は、東大受験生たちの就寝時間で深夜12時を超えるというのはごく少数です。調査によると、東大受験生の睡眠時間は7〜8時間が多く、だいたい夜11時前後には寝ているようです。深夜に眠気をこらえてまで勉強するのは、かえってマイナスだということを彼らは身をもって知っているのでしょう。私は東大生の効率的な学習習慣を確認するために、あえて話題にしたのです。ところがその質問に対し、あるお母さんはわが子が「何時まで起きていたか知らない」と答えたのです。なぜですかと尋ねると、「私は夜10時には寝てしまうので、子どもが何時に寝るかわからない」と言うのです。

東大を受験する子どもがいるなら、わが子を気づかい、その時間までお母さんは起きているという固定観念が私にはあったのですが、そのお母さんは無理することなく自分のペースで生活していたのです。

受験生の子どもがいる場合、どの家族も生活に多少の制限が出てきますが、それが苦役にまでなってしまうと、子どもが緊張し、かえって子どもの学習にはマイナスになってしまいます。私はそうした状況をリセットするためにも、お母さん方には自分を崩さず、マイペースで、自分のしたいことをするよう勧めるのです。