韓国のベストセラーエッセイ『家にいるのに家に帰りたい』。BTSのVがグラミー・ミュージアムで受けたインタビューで「最近本を読み始めました。その本は僕にたくさんの慰めと共感の言葉をくれました。でもまだ本の表紙しか読んでいません」と語り、日本でも話題をさらった一冊です。満を持して出版された翻訳版も3万部以上の大ヒットを記録しました。

1994年生まれのクォン・ラビンさんが、上手く言葉にするのは難しいけど、誰もが心の中に抱えている思いを綴っています。“私だけのために書いてくれたみたい!”と共感の声多数、BTSファンじゃなくても読む価値ありです。今回は著者のクォン・ラビンさんの特別インタビューをお届けします。

 


関連記事
「私が抱えるモヤモヤを言語化し過ぎ!」BTSのVが読んだからだけじゃない、韓国エッセイヒットの理由>>


悩み、迷い、1文字ずつ書きながらたくさん泣いた


——『家にいるのに家に帰りたい』の出版は、Instagramがきっかけと伺っていますが、Instagramをはじめたきっかけと、本を出版することになった経緯について教えてください。

「ずっと文章を書き続けるうちに、それを見た親しい作家の方たちから、『わたしがやっているみたいに、Instagramに投稿してみたら?』と提案され、Instagramを始めました。幼いころからいろいろな本を読み、小説を書きたいと思っていて、小説を書く前に自分の文章が人々にどれぐらいの影響を与えるのか確かめてみたかった。そんな思いからわたしの人生をありのまま率直にさらけ出した『家にいるのに家に帰りたい』が生まれました」

紫色の髪の毛がトレードマーク、著者のクォン・ラビンさん。

——タイトルの『家にいるのに家に帰りたい』に込めた意味とは?

「『家にいるのに家に帰りたい』というタイトルは、文字通り、年齢に関係なく自分が落ち着き癒される空間である家のことを意味しています。一人暮らしや寮生活をする10代の学生や20代の社会人であれば誰もが、家族と暮らした幸せな家を懐かしく感じることでしょう。家にいても育児と家事で忙しくて休む空間がない主婦や、仕事が終わった後家事と育児に追われてひとりでゆっくりする時間がないワーキングマザーも、夢のように完璧な家を望んだことがあるのではないでしょうか。そんな思いをタイトルに投影しました」

——本書は家族や恋人との別れ、出会いをベースに書いています。自分自身の経験を文章としてさらけだすことに、ためらいはありませんでしたか。

「何度も悩み、迷い、1文字ずつ書きながらたくさん泣きました。ひとつの段落を書いた後、1週間何もできなかったこともあります。作家というのは精神的につらい仕事だと悟りました。でも、わたしにとってはトラウマだとしても他の人にとっては前に進むためのきっかけになるだろうと思い、正直に書いてみました。世の中にはいろいろな人がいます。ひとり親家庭で育ったわたしがマイノリティーに属するのであれば、マイノリティーである誰かがわたしを踏み台にして、つらいことを乗り越えてほしいと望む気持ちが大きかったのです」

『こんなわたしも生きているし、大丈夫。この文を読むあなたにも希望を与えたい』

でもこんなふうに言うわたしも、本が出版された日には、知らない人たちに心の内がバレてしまったような気がして、すごく怖くなって泣きました。それにもかかわらず、正直に本を書いたのは、読者の方たちから応援のメッセージをいただいたからです。いつも感謝しています」