東京オリンピックの開催が迫る2021年7月にコロナ罹患した、4歳の男女の双子と10カ月の乳飲み児3人の母で育休中の餡蜜桃子さんは、次男を「付き添い人」として入院します。その後夫もコロナ発症し別の病院へ、そして陰性の双子は児童相談センター管轄の下、夫と同じ病院の別の診療科に隔離入院することに。無事退院した餡蜜さんは満を持して双子を迎えに行きますが……。餡蜜さんの1カ月にわたるコロナとの闘争の記録を8日連続でお届けします。

※本記事は2021年7月時点のケースです。行政の指針や対応が現在と異なる部分があります

餡蜜桃子さんのInstagramより。素敵写真と3児の育児についての生活感溢れるコメントとのギャップが魅力

 


8日ぶりに双子と再会!


帰宅してすぐに家中の掃除と消毒をしました。同じウイルスに違いないけど、これからここで暮らすからには、また誰かが体調を崩すような要因は可能な限り排除しておきたい一心でした。夫の冬物のパーカーが出しっぱなしになっていました。熱で寒かったのでしょう。よくぞ高熱と戦いながら双子の安全を守ってくれたなと感謝しました。

それから最寄りのスーパーへ買い物に出ました。夫の濃厚接触者である双子はまだ外に出せないので当面の食料を買い込みます。以前までは食料についてもミニマリストでしたが、一番はじめの緊急事態宣言以来、すっかり何日分も買い込むテクを身につけました。

夫の熱も引いたとのことで一安心。このまま平熱を保って早く帰ってきてほしいな。早くまた5人で暮らしたいなと思いました。

いざ、タクシーを拾い双子を迎えに行きます。ジャパンタクシーのような運転席と客席が離れている車を選びたかったのですが、生憎なかなか空車が通らず、防護シートなどあまり感染対策も施していない古びたタクシーに乗車しました。

運転手さんに断り、窓を全開にします。気のいいおじさんの運転手さんは「そうだよね、気付かなくてごめんなさいねー!」とおっしゃってくれたのですが「運転手さん違うんだ!!! 運転手さんを疑っているんじゃなくて私がついさっきまでコロナで入院してたんだよ(泣)……」とは言えず曖昧な表情で応えるしかありませんでした。一応私からはもう感染させることはないということで退院しているわけですが、万が一があったら申し訳ないので終始俯いて揺られていました。

病院に到着し、タクシーを降りようとすると守衛さんが近づいてきて「餡蜜さんですよね? 降りないでそのまま乗ってここでお待ちください」と声をかけてきました。

え……でも陰性とはいえ濃厚接触者の双子をこの運転手さんのタクシーに乗せていいものか。同じタクシーといえども、ここにコロナ病棟があることを知ってロータリーで客待ちをしているタクシーのほうがソフト面でもハード面でも対策を講じているだろうと思いました。でもそうこうしているうちに防護服を着てフェイスシールドを着用した明らかに感染症対策を施した看護師さんが退院手続きの書類を持って近づいてきました。

「運転手さんごめん!」と思い「実は陰性だけど濃厚接触者の子どもをふたり連れて帰りたいのですが乗せていただくことは可能ですか?」と急ぎ尋ねました。絶対断られるに決まっている。でも予想に反し運転手さんは「全然いいですよ! むしろ僕もね、たぶん罹ったんですよね、冬に」と自分の体験談を饒舌に語り出したのです。運転手さん有難う(泣)!!

そうして一連の手続きを終えると「双子ちゃんを呼んできますね」と看護師さんは病棟へ戻っていきました。看護師さんの姿が消えたあとに「は! 双子がトイレに行きたがったり、この優しい運転手さんの車でお漏らしするようなことがあっては大変だ」と気付き、守衛さんにお願いして病棟でトイレに行かせてから連れてきてくださいと伝えてもらいました。守衛さんも前代未聞の伝達内容であったことでしょう……。

そしてついに、ついに双子が降りてきました。実に顔を見るのは8日ぶり。「ママ~!!」と飛びついてきてくれるかと思いきや「ぼくちん~!! 会いたかったよ~~!!」と弟に夢中な双子。「頑張ったね~! 有難うね~!!」と、しきりに労う私に対しては「ママ、もうお風邪治ったの?」と非常に大人びた対応を取るのでした。

飛沫が飛ぶと悪いので「続きはおうちでお話しようね」と何度も言い聞かせ、30分ほどで自宅に到着。運転手さんにはかなり多めにお支払いしました。「いいんですか~? やった~!!」と無邪気に喜んでくださったので本当に気の良い人に乗せてもらえて良かったなぁと思うのでした。