確かに日本経済が低迷しているため賃金が上がらず、国内消費に依存する業界は値下げを余儀なくされてきました。しかし、私たちが普段、手にしている商品の多くは輸入で成り立っていますから、輸入される商品の値段は着実に上がっています。輸入価格に引きずられる形で、日本全体の物価もわずかですが、上がり続けてきたというのが現実であり、日本全体の物価が下がったことはほとんどありません。

 

首都圏における新築マンションの平均販売価格はすでに6000万円を突破しており、20年間で1.5倍にも値上がりしました。これも鉄筋など資材価格が上昇したことが原因であり、日本人の所得とはまったく無関係に価格が決まってしまいます。

物価が上がっているのにデフレ、デフレと言われ続けたのは、その方が政治的に好都合で得する人たちがいたからですが、事実とは異なる情報提供を行っても国民生活は改善しません。

日本人は皆、物価は下がっていると思い込まされてきましたから、企業が値上げを発表すると、すさまじいまでの批判が寄せられます。筆者は以前から「物価は下がっていない」と何度も記事などで指摘していましたが、組織的なものなのか、かなりの誹謗中傷を受けました。

その結果、企業は原材料価格が大幅に上がっているにもかかわらず値上げを決断できず、苦肉の策として、価格を据え置き、内容量だけを減らすという、いわゆるステルス値上げを行ってきました。諸外国にも価格を据え置いて内容量を減らすというやり方は存在しますが、ここまで大規模かつ広範囲にステルス値上げが行われているのは日本だけです。

問題は今後の推移ですが、値上げの根本的な原因が日本と諸外国の経済格差にあるのだとすると、これが解消されない限り、給料は上がらず、値上げだけが続くという話になってしまいます。日本は先進諸外国と比較するとワクチン接種で致命的な遅れが出ており、医療体制も著しく脆弱であることから、コロナ危機からの回復は相当、遅れることになりそうです。非常に言いにくいことですが、これが日本の現実といってよいでしょう。

変異株の動向など不確定要素はありますが、諸外国がこのままコロナから回復すれば、日本との格差はさらに大きくなってしまいます。日本でもワクチン接種の目処が付くまでの間、節約を続けるしか対策はなさそうです。 


前回記事「リスク抑制のカギは「確率」。感染爆発の中で私たちが今思い出すべきこと」はこちら>>

 
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