夫婦仲がうまくいかず「こんなはずじゃなかった……」と考えるときに、ふと脳裏に浮かぶ「離婚」の2文字。とはいえ、離婚届に判を押して役所に提出、はいさよなら! というわけにはいかないのが現実です。弁護士の南和行さんは、著書『夫婦をやめたい 離婚する妻、離婚はしない妻』の中で、自身が離婚相談を受けてきた女性たちについて、次のように語っています。

「僕は10年以上、弁護士をしてきましたが、『離婚したい』と相談にいらした人に、離婚について法律の仕組みの説明をすると、『ええっ? そうなんですか? 知らなかった』という反応をする人がほとんどでした。『離婚ってどうするのか』を知らなかったがために、ここぞというときに決断をし損ねたり、自分や相手を必要以上に傷つけたり、時間やお金を無駄にしてしまったり……。『下手な離婚』を招いてしまうのです」

そんな南さんの経験を元に、本書では19人の架空の女性を主人公とする離婚物語を紹介。法律的観点でアドバイスを行いながら、離婚に至る・または至らないまでの経緯を伝えます。「離婚」の2文字が浮かんだとき、切ってもきれない存在となる「法律」を知れば、自分で納得のいく決断ができる――。人生の岐路に心強さをくれる本書から、今回は「事実婚で2児の母・レワ子さんの離婚? 騒動」について、一部抜粋してご紹介します!

 

経済誌を発行する出版社に勤務するレワ子さん(仮名)は、大学4年生のときにゼミの先輩で大学院生の夫と知り合い結婚。夫は著作も何冊かある私立大学の教員です。これまでの実績や仕事への影響を考えた末、夫と相談のうえ「事実婚」を選択したレワ子さん。もちろん、婚姻届は出していません。

大学教員を務め社会学者でもある夫は、論文を発表したり、メディアに執筆する立場だったため、レワ子さんが結婚によって「名前の苗字が変わる」ことの影響について、深い理解を示していたといいます。それから数年後、ふたりは夫の不倫発覚によって人生の岐路に立たされることになるのですが……まずは順番を追ってふたりの結婚生活を覗いてみましょう。

 


事実婚を選択したふたりが直面した「不便さ」とは?


ふたりの「事実婚」生活は順調そのものでした。しかし、子供が生まれたときに初めて、「事実婚」ならではの手続きの不便さに直面します。ふたりの息子たちが生まれたとき、レワ子さんたちが踏んだ手順は、次のようなものでした。

長男を出産するときは、戸籍の上では、レワ子がシングルマザーとして出産し、夫は認知届により父親となった。しかしそれだけでは夫は親権者ではなく、親権者はあくまでもレワ子だけだった。

その2年後、次男を出産するとき、レワ子と夫とは出産予定日の3週間くらい前にペーパー婚姻届を出した。そうすることで、婚姻していれば夫の認知届も不要であり、双方がふたりで親権者になるということだった。

そして次男が生まれて2週目くらいで、夫とレワ子は、長男の親権者を夫、次男の親権者をレワ子としてペーパー離婚した。子供たちの名字はそれぞれ親権者に合わせることにした


ここまででもかなり複雑ですが、この後さらに必要な手続きが待ち受けていたといいます。