では、科学的な視点だけを武器にその真偽を確かめていきたいと思います。そもそもそれらの「根拠」をもとに「有効である」と言えるのでしょうか。

ここでまずはっきりとしておきたい点は、「博士が言ったことは正しい」とは限らないという点です。それ以前に、その博士が本当にそう言っているかさえ確認できないこともしばしばです。むしろ、わざわざ博士の名前を引用しなければならないほど、根拠が乏しいことを示唆しているのかもしれません。

日常生活の中で原因を見極めるのは難しい


またもう一つ、以前お話した「観察研究で示された相関関係は、因果関係とは区別されるべき」というルールを思い出していただく必要があります。

先の観察研究の話に戻ると、「観察研究で、抗酸化物質をたくさん摂取している人と認知症リスク低下との間に相関関係がある」と示されていることを説明しました。

しかし、だからといって抗酸化物質をたくさん摂取すれば認知症のリスクを低下できるという因果関係は必ずしも成り立たない、と言えます。

というのは、抗酸化物質をたくさん摂っている人は、抗酸化物質が理由で認知症リスクが低減したと見せかけて、実は肉を食べる量が少ない傾向にあり、肉を食べる量が少ないことこそが認知症を減らしていたということがあり得てしまうからです。

この場合、抗酸化物質を全く摂っていない人でも、肉を食べる量が少ない人は認知症が少ないということになります。

 

確かに、よくよく自分自身の日常生活を振り返ってみれば、人は1週間の中だけでも本当に様々な種類の食品を食べていることがわかります。また、運動をしたり、仕事をしたり、様々な行動をとる中で、大豆が原因だと見極めるのがいかに難しいかというのをなんとなく想像していただけるかもしれません。

 

このため、大豆のイソフラボンのサプリメントが有効かどうかを見るためには、別途それを証明するための研究が必要になります。それがどのような研究かと言えば、こんなものになります。

イソフラボンのサプリメントと、イソフラボンのサプリメントと全く同じ形をした有効成分の入っていない偽物のサプリメントを準備して、事前に条件を揃えるためにランダムに割り付けた2つのグループにそれぞれのサプリメントを飲んでもらい、認知症の発症率の違いをみるという研究です。

このような研究を「ランダム化比較試験」と呼んでいます。