大切なのは、完璧じゃなくてもいいんだと思える自分をつくること
――老いを楽しむってすごく大事なことですが、なかなか前向きに思えない人も多いと思うんですね。若村さんはもともとポジティブなタイプだったのでしょうか。
20代の頃は自信もなかったし、決してポジティブな性格ではなかったと思います。それを、少しずつでもいいから前向きになれるように自己改革に努めてきたという感じですね。
――そうなんですね。
もともと性格がどちらかというと完璧主義でした。何に対してもこれはこうしなければいけないと思い込んで、自分をがんじがらめにしてしまう性格で。そこから、完璧じゃなくてもいいんだと思える自分を、時間をかけてゆっくりつくっていきました。
――ぜひどんなことを実践されていたのか聞いてみたいです。
何から始めたかと言うと、いただいたプレゼントの包み紙を思い切って破る、ですね(笑)。習慣を変えてみようと。それまでずっとシールを綺麗に剥がすタイプでした。でもそれをわざとビリビリ破る。些細なことなんですけどね。最初は少し罪悪感がありましたが、ビリビリという音と共に“キチンとしないと”という強追観念のようなものから解放されていくような感覚があるというか。ビリビリ破れる自分がいるんだ、ということがちょっとうれしくなるんです。
――それ、めちゃくちゃわかる気がします(笑)。
そういう小さな自己改革をひとつずつ積み重ねていくうちに、だんだん自分を許せるようになる。自分を許せるようになると、今度は他人も許せるようになってくるんです。
本当は自分に厳しく人に優しくというのが理想なんだと思いますけど、私の場合は自分に厳しくしていると、人にも同じだけのものを求めてしまいやすくて。他人が何か失敗したり間違えても、そういうこともあるよねと言える自分になりたかった。今はもう他人が何をしても何とも思わない。そうやって少しずつポジティブで大らかな自分になれてきた気がします。
若村麻由美 Mayumi Wakamura
東京都出身。俳優・仲代達矢主宰の無名塾養成期間中に、NHK連続テレビ小説「はっさい先生」(97)のヒロインに選ばれデビュー。エランドール新人賞を始め、ドラマ・映画・舞台で数々の受賞歴がある。2008年より演じる「科捜研の女」風丘早月役が人気に。2020年後期NHK連続テレビ小説「おちょやん」座長役も好評を博した。能舞台を中心に『原典 平家物語』、『原文 曽根崎心中』といった語り芝居をライフワークとして公演を続け、古典から現代劇まで役柄の幅も広く活躍。主な出演作に、映画『月光の夏』(93)、『金融腐蝕列島 呪縛』(99)、『蒼き狼〜地果て海尽きるまで〜』(07)、『臨場 劇場版』(12)、『一粒の麦~萩野吟子の生涯~』(19)、『みをつくし料理帖』(20)他。2021年は映画『老後の資金がありません』(10)が公開を控える、現在は舞台「Le Fils息子」東京芸術劇場プレイハウス(~9/12)に出演中、以降7都市に巡演予定。
<作品紹介>
映画『科捜研の女 -劇場版-』
9月3日(金)より全国ロードショー
1999年の放送開始から20年以上続く人気ドラマ「科捜研の女」シリーズが、待望の映画化。科学捜査研究所の榊マリコ(沢口靖子)が今回挑むのは、京都を皮切りに世界へ拡大した「世界同時多発不審死事件」。捜査一課の土門刑事(内藤剛志)、解剖医の風丘教授(若村麻由美)らとともに捜査を進めるものの、殺人を裏付ける証拠が出ない。そんな中、“未知の細菌”を研究する天才科学者・加賀野(佐々木蔵之介)が捜査線上に浮上し……。他に渡辺いっけい、小野武彦、戸田菜穂ら歴代キャストが集結。
スタイリング/岡のぞみ
ヘアメイク/小泉千帆
取材・文/横川良明
構成/山崎 恵
mi-molletで人気があったため再掲載しております。
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