ファッションやメイクは、自分に自信が持てない人にとって、時には鎧のような役割を果たしてくれます。でも、その守ってくれるものを失ってしまったら……。BE・LOVEで連載中のマンガ『恋じゃないなら名前をつけて』の主人公・伊達司紗(35)は、外資系企業のバリキャリで、スーツを着こなし、メイクもバッチリ。でも、3年付き合っていた彼に二股かけられていた挙げ句に乗り換えられ、仕事でも行き詰まってしまいます。いっそ「転生してぇ――」とつぶやくほどの崖っぷち状態から逆転なるか?

「今までの人生、全部水に流して今はただ休みたい」

外資系企業で働いていたはずの35歳の伊達司紗(つかさ)は、そう思いながら真夏の公園で頭から水をかぶっていました。傍らにはスーツケースがひとつだけ。その様子を見ていた若い男性は、彼女を見るなりすーっと離れていきました。そりゃ、逃げますよね……。でもなぜ、平日の昼間っから彼女はこんな奇行に及んでいたのでしょうか?

 

数日前までは、外資系企業でバリバリ働いていた司紗。でも3年付き合っていた社内の彼氏に、社内で二股をかけられていたあげくに乗り換えられ、結婚も決まったため、他の社員たちの噂の的に。もちろん辛くて平気なわけがないのに、それをおくびにも出さずに仕事に励んでいたら、「武将系女子はメンタルも鋼かも」(司紗の名字が伊達なので)と言われる始末。

 

男に裏切られても、せめて仕事は裏切らないでほしいという気持ちで仕事に邁進していたものの、会社の突然の方針転換で上司とぶつかり、心がぽっきりと折れてしまった司紗。退職届を出し、何日も家に引きこもっていたところ、突然の訪問者が。家賃が引き落としできずに未払いになっていたため、管理会社の担当者が来て部屋を追い出されてしまうことになってしまいます。

 

というわけで、水でもかぶって少しは冷静になれるかと思ったけど、ただ怪しい女になっただけ。高い家賃にハイブランドの服、デパコスにお金を投じていたのは、強い女という武装のため。鎧だけは立派で中身が伴っておらず、自分の人生は一体なんだったのだろうか……、と。

 

行くあてもなく、夜になっても公園のベンチに座っていた司紗に、謎のイケメン男性が話しかけてきます。それは昼間に頭から水をかぶっていた司紗を遠目に見つつ、逃げ去っていった男性でした。「目ざわりなら移動しま…」と立ち上がろうとしてよろけてしまう司紗。男性は「ほっとけない」と司紗を抱きかかえ、「オレ 近くで店やってて」なんて言いますが、いやー、いくらその男性がイケメンでもどこに連れ込まれるかわからないから怖いでしょ! 司紗も大暴れしますが、連れて行かれた先は、古民家を改装した「山猫」というケータリング店兼自宅。ビールや料理を振る舞われ、ずっとまともに食べていなかった司紗の心と体に染み渡っていきます。そしてボロボロと涙があふれて――。

 

自分が弱りきっている時に、美味しい食べ物を出されて優しくしてもらったら、そりゃ涙も出ますよね。ましてやメイクやファッションで武装して弱い部分を見せなかった司紗ならなおさらです。武士のように強くなり切れず、結局逃げ出すことしかできなかった司紗に、「逃げたっていいじゃないですか」と優しく言葉をかける男性。これが、ケータリング店「山猫」を営む辻森悠輝との出会いでした。

当面のお金を作るためにいろんなものを売り払って、スーツケース一つしかなく、仕事も住むところもない司紗に、「うちで働かない?」(しかも住み込みで!)と手を差し伸べてくれる、神様のような悠輝。身の丈に合わない武装を続けて何もかも失ってしまった司紗は、今度こそ間違わずに生きていたい! と願い、あまり役に立たない「山猫」の雑用係からリスタートを図ります。そこに、悠輝の同居人で若手人気モデルの糠谷染太郎や、急に会社を辞めた司紗の身を案じる同期でエリートで上司だった柿崎護が絡んできて司紗を翻弄していくことに……。

今まで頑張ってきたつもりなのに、なんだったんだろう。と途方に暮れてしまうことは誰にでもあるはず。いきなり家を追い出されることは稀なこととしても、順調だったはずの恋愛や仕事に行き詰まってしまうのも、決して他人事ではありません。だからこそ、先のことはわからないけど、とにかくなんでもいいから今できることをがんばって、自分の居場所を作ろうとする司紗の奮闘ぶりを見ていると応援したくなります。ファッションやメイクといった武装がなくても、なんとかなるはず! 優しいけどどこかミステリアスな悠輝、生意気なんだけど時々かわいい姿を見せる染太郎、かなり強引だけど、仕事では支え合ってきた護と、三者三様のイケメンに囲まれて迫られるなんて、それこそ転生しなきゃありえないかもしれないけど、マンガの世界で浸ってみるのはいますぐできる、ということで! これからの展開が気になるラブコメディです。

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『恋じゃないなら名前をつけて』
篠丸のどか 講談社

見栄を張って強がって生きてきた伊達司紗・34歳。外資系企業で出世街道を驀進中だったが、3年付き合った社内の男を社内の女に取られ、会社にも邪険にされて辞表を提出。何もできず考えられない日々……。身の丈以上に衣食住にお金をかけていたため貯金もなく、マンションも追い出され、転生したいなどと思っているところに、謎のイケメンが現れ!? 強制人生リスタート! 今度こそ間違わずに生きていきたい――!!