若い頃は恋に仕事にと、いろんなことにワクワクして、前向きな気持ちでいられたのに、40代が近づくにつれ、「もうこんな歳だし……」と腰が引けてしまった、なんてことはありませんか? ましてや結婚していたり、子どもがいたりすれば、自分よりも家族が優先になりがちです。BE LOVEで連載中の『いま「余生」って言いました?』の主人公・藤野玲奈は、高校2年の息子と暮らすシングルマザー。子育ても一段落し、タイトルどおり、もう「余生」気分だったのですが――。

39歳の藤野玲奈は、高校2年の息子・修と暮らすシングルマザー。離婚していろいろ大変だったものの、ようやく子どもの手がかからなくなり、家事、育児、仕事をそこそここなしている女性です。自分では、一般的な「型」にはまっているのが安心で、あるべきフォルダ内に収まっている状態を心地よく思っています。

 

文具メーカーの企画部で正社員として働く玲奈ですが、バリキャリではなく、どちらかというとサポートタイプ。自分を“藤野ママ”と呼び、“おかんスキル”を駆使してみんなのフォローに回り、さくっと定時で帰るのが自分のあるべき姿と信じて疑っていません。だから、若い女性社員たちが今夜の合コンの話題で盛り上がっていても、玲奈にとっては「遠い日の花火」のよう。リアルな恋なんてもういいと思っていました。

 

そんなある日、企画部に新人の緑川遥という青年が入ってきます。息子の修とは5歳差で、玲奈に至っては17歳差。整った顔立ちで、肌もぴかぴか。上司が飲みに誘うと、速攻で断る遥。それを見て慌てた玲奈は、おかんスキルでフォローし、なんとかその場を収めます。この日も無事定時までに仕事を終え、家に帰らずある場所に向かう玲奈。行き先は戦隊モノの映画の初日舞台挨拶会場でした。“良きワーキングママ”というカテゴリに収まっている玲奈が、そうした枠組みから外れた、唯一ともいえる秘密の趣味が「戦隊モノ」。こっそりとテレビ番組を見たり、ヒーローショーに行ったりすることで、元気をもらっていたのです。

 

ある休日、玲奈は修と一緒に祖母の妹であるトシ婆のお見舞いに行きます。その前に親戚から、病院でトシ婆に彼氏ができたということを聞かされていた玲奈は、いざ、トシ婆を目の前にして戸惑ってしまいます。トシ婆は、「笑っちゃうだろ? 棺桶に片足突っ込んだふたりが愛を語るなんてさ」と言いつつも、しっかりと恋する女性の笑みを浮かべ、玲奈の心を揺らします。

 

大学時代の友人・みゆきと飲みに行くことになった玲奈。みゆきは大手エステチェーンの店長で、上昇志向が強く、恋愛体質で華やかなタイプ。1歳年上ですが、独身で自由に恋愛し、「運命の人」を探しています。そんなみゆきを前にして、自分にはみゆきのようなパワフルさはないし、「40になったらのんきにまったり『余生』を送るような気持ちで人生過ごしたいよ」と玲奈。

 

みゆきは「もはやそれ老婆じゃん!」と怒り狂うのですが、40歳は「もう」じゃなくて「まだ」。「子持ち」「母」「地味」と自分をラベリングして、何かを取りこぼしていたかもしれない玲奈に強烈なダメ出しをします。とはいえ、玲奈にとってラベリングは整理整頓のようなもの。空気を読んで、あるべき枠に収まることでここまで来られたわけで、そう簡単に自分の生き方を変えることなんてできません。

そんなことを考えながら、玲奈が向かった先はとあるギャラリー。かねてからいいなと思っていたイラストレーターの個展が開催されており、新商品のインクの開発に協力してもらえないかと目星をつけていたのです。会場で本人に挨拶をしてびっくり。そのイラストレーターは大学時代に密かに憧れていた、サークルの2つ上の白澤先輩でした。遠くから眺めていただけだったのに、玲奈のことを覚えていた白澤先輩。恋愛にときめくトミ婆の姿や、自分でカテゴライズして取りこぼしていたかもしれない幸せへの思いに押され、思い切って白澤先輩と連絡先を交換。一気にハイテンションになり、仕事もさくさく進むようになります。実はこのあと、思いがけない出来事が待ち構えているのですが、それは試し読みの第1話で確認してみて!

 

自分をしっかりカテゴライズして、あるべきフォルダ内に収まっている状態が、居心地がいいという玲奈。シングルマザーで大変な時期があったからこそ、少しでも楽に、快適に生きる術としてこの方法を確立したのかもしれません。玲奈は、あとは「余生」と悟りを開きかけてはいたものの、決して「もう40歳だし」「自分なんか」と必要以上に卑下していないところがポイントだと思うのです。

白澤先輩を皮切りに、このあとまさかのモテ期突入になるのですが、素直で周囲に気配りができて、バリキャリじゃなくても仕事に前向きで、人には言えないけど戦隊モノという好きなものもある玲奈が魅力的に映ったからなのかもしれません。自分がするかどうかはもちろんその人次第ですが、「恋っていいな」と素直に思える、素敵な作品です。

「そんなに次々といい男が現れるわけないじゃん! 所詮はマンガだしね」とカテゴライズして自分のフォルダに入れないのもありかもしれませんが、その取りこぼしたところに、ワクワクした気持ちや、前向きになれるエッセンスがたくさん散りばめられているかもしれませんよ。
 

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『いま「余生」って言いました?』
アキヤマ香 講談社

高2の息子を持つ39歳のシンママ・玲奈。「アラフォー」で「ママ」が恋愛なんてみっともないからしない。定時で帰る職場では、出世は望まず「おかん」に徹する。など、何かとカテゴライズし「世間体良く」を第一にしている。子育ても落ち着いてきて、もう「余生」を送っているような気分。そんな折、80歳近い祖母の恋愛が発覚し、玲奈はある決意をする。その後、憧れの人と再会し! 新入社員に告られ! 凪だった人生が動き出す!?