地中海式ダイエットがうつ病予防に有効かもしれないと考えさせられるようなデータがあります。
地中海式ダイエットとは一般的に、果物や野菜、全粒穀物、豆類、種実類、オリーブオイルを多く含み、魚、鶏肉、乳製品は少量から中程度の量で、赤身の肉はほとんど摂らない食事法のことをいいます。
この研究は、「相関関係」を示すための観察研究の結果をまとめた「メタアナリシス」と呼ばれる手法で行われた研究です。地中海式ダイエットをどれだけ遵守しているかという点と脳卒中、うつ病、認知障害、パーキンソン病との相関関係を評価した22の研究データをまとめています(参考文献2)。
うつ病リスクを下げる可能性を示す
22の研究のうち、9つの研究で地中海式ダイエットとうつ病の関連性を評価していました。また、9つのうち、7つが65歳以上の高齢者を対象にした研究でした。対象者は合計すると、2万人近くに上っていました。
この研究では、地中海式ダイエットをほとんど毎食のように摂っている人、地中海式ダイエットを半々ぐらいで摂っている人、そして地中海式ダイエットをほとんど摂っていない人に分けられました。
すると、前者2つのグループは、地中海式ダイエットをほとんど摂っていない人と比べてうつ病のリスクが低く見られ、地中海式ダイエットとうつ病のリスク減少との関連性が示されました。
この研究も、一見すると「では、食事を地中海式ダイエットにしよう」と早合点してしまいそうになりますが、そう単純ではありません。
地中海式ダイエットを守れるということは、そのぐらい精神的に余裕があり、うつ気分がそもそも全くない人が多かった、うつの素因のない人だから地中海式ダイエットをきっちり守れたといったような説明が成り立つ可能性もあり、この研究結果をもって「地中海式ダイエットを摂れば、うつ病を減らせますよ」ということはできません。
しかし、いずれにしても特定の食事が精神的な健康とも関連しているというのは興味深い結果です。
また、地中海式ダイエットは、心筋梗塞や脳梗塞などの病気の発症が少なくなることがランダム化比較試験で示されている食事でもあるので、身体的な健康には寄与してくれる可能性が高いと考えられます。筆者は地中海式ダイエットのまわし者でもなんでもないですが、そのような意味でも試してみる価値はありそうです。
前回記事「生活習慣病の治療が「うつ病予防」に重要な理由とは【医師が解説】」はこちら>>
参考文献
1 Lucas M. Coffee, Caffeine, and Risk of Depression Among Women. Arch Intern Med 2011; 171: 1571.
2 Psaltopoulou T, Sergentanis TN, Panagiotakos DB, Sergentanis IN, Kosti R, Scarmeas N. Mediterranean diet, stroke, cognitive impairment, and depression: A meta-analysis. Ann Neurol 2013; 74: 580–91.
写真/shutterstock
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