シンプルでベーシックなのにパッと目に留まるスタイリッシュなコーディネートが魅力のスタイリスト佐藤佳菜子さん。今回は私たちが刷り込まれてきた「いいものを買って、それを一生使おう」というアイデアを、佐藤さんは今どんなふうに捉えているか、教えてもらいます。
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今日のテーマは
「長期休暇について」。
わたしがいつ休暇をとるかというどうでもいい話ではなく、手持ちのファッションアイテムのとるロングバケーションについてです。
わたしは白黒はっきりした性格をしていて、断捨離がとても得意です。
いる、いらない
いる、いらない
わたしのワードローブは、自分の職業から考えるとおそろしく量が少ないし
自分で所有しているものもほとんど把握していてすこしも混沌としていません。
それは、しょっちゅういらないものを処分しているから。
なんなら、もういらない、というものをクローゼットから見つけるのは喜びに近い。
ありがとう、
さようなら。
せっかちで回転の早いワードローブ。
そんな中でも、これは、いまはいらなくても、近い(か遠い)未来、絶対に使いたくなるから捨てたくない。と、かたくなに何年も持ち続けているというアイテムもあります。
理由は定かではないけれど確実に未来の自分がまたこれを身につけるという確信がある。
そういう人たちには、場所を惜しまずロングバケーションを与えることにしています。
この秋、長くトレンドだったビッグシルエットのコートにすこし疲れて
タイトで短めの丈が恋しくなりひさしぶりに陽の目を浴びたこのコート。
5年は着ていなかったと思います。
クローゼットの中で目に入るたび
じゃまだなー
じゃまだなー
きみは、じゃまだなーと思いながらも
いやいや
でも、絶対また着るからがまんだ。
と自分をなだめすかして耐えてきた5年間が報われて晴れてのリバイバル。
小さな体に余るほどのビッグコートを運んでいたわたしおつかれ、
と言いたくなるほど身のこなし、足さばきが軽やかでなんて楽。
アゲ↑
新鮮な気分でまたこのコートを楽しめる瞬間がまた突然やってきた。
「一生モノ」という言い回しは、もう古びた言葉なのだと思う。
いいものを買って、それを一生使おうというアイデアを刷り込まれてきたのは、40代前後の私たちがきっと最後の世代で、若い世代の方々にとってみたらそんな価値観すらないかもしれない。
でも、少なくともぎりぎり一生モノ世代のわたしはその在り方を考える。
正確にいったらこのコートは、毎年、毎年出番があったわけではないしすり減るまで着込まれたわけでもない。
ただ、
確実にわたしの人生に寄り添って何年もうちにいて、長い休みを経ては復活してわたしを喜ばせ、またきっと、長い眠りにつく。
きっとこれがわたしの「一生モノ」のスタイルだ。
すこし怠慢で、すぐに休暇をとる、わたしの一生モノたち。
いつ出番が来るとも知れず、ひたすらにぐーすか寝ているその人たちをじゃまに思いながらも、心の隅ではいつ、またどんなスタイルで身につけるときがくるのか。にやにやと見ている自分もいる。
今週急にさむくなって、あわてて起こしたこのコートも長い間寝込んでいたジャストサイズのダッフル。
さて、みなさま。やっと冬ですね。
気温の変化に負けずにがんばりましょう。
また来週。
記事内カット撮影/親友 東原妙子、妹
文/佐藤佳菜子
構成/高橋香奈子
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