適応に苦しむからこそ新たな価値を創造できる

飲み会は楽しいけれど、家に帰るとぐったり...外交社会に適応する「隠れ内向」タイプとは?_img4
 

社会適応が良いということは、既存の体制に組み込まれやすいことを意味します。ゆえに、社会適応の良い人物は、たいてい一定の行動や思考のパターンを身につけていきます。

適応が良いというのは、与えられた社会的役割にふさわしく振る舞うことができるということだからです。周囲の意向を巧みに取り込み、それに沿った行動ができますが、ある意味では規格にはまっていくことでもあります。

それに対して、社会適応がスムーズにいきにくい内向型は、自分の世界を大切にする傾向があります。それが適応の妨げになっているのです。

何事に関してもまず疑問を突きつけ、自分自身の判断を重んじるため、どうしても社会適応に支障が生じがちです。組織の側からしても使いにくい人物ということになります。

そこで失格の烙印を押さえてしまうこともあるでしょうし、自分でも不適応人間を自嘲気味に言ったりする人もいます。

でも、カメレオンのように状況に合わせて自分の色を素早く変える外向型ばかりでは、組織は硬直化してしまうでしょう。モノや情報が満ち溢れ、人々はたいていのモノやコトに飽き飽きし、何事も付加価値的なアイデアがないと勝負にならない今日、当たり前のような流れに待ったをかけ、新たな見方、新たな価値を提起する人物が求められます。

そうなると、単に適応の良い外向型よりも、非能率的なところがあったり、自分の趣味や価値観にこだわる頑固なところがあったりしても、独自な世界をもつ内向型の方が力を発揮する可能性があります。

企業戦士、会社人間、画一性、大量生産といったものから、人間らしい生活、ゆとり、遊び心、私生活領域の充実、個性、多品種少量生産、ほんもの志向といった価値観の転換は、まさに内向型の時代の到来を暗示しています。
その意味でも、内向型であることを恥じることなく、自信を持って誇示していいでしょう。

 

著者プロフィール
榎本博明(えのもと・ひろあき)さん

MP人間科学研究所代表、心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授を経て、現在MP人間科学研究所代表。著書に『伸びる子どもは〇〇がすごい』『読書する子は〇〇がすごい』『「上から目線」の構造』『ビジネス心理学大全』(以上、日本経済新聞出版)、『「対人不安」って何だろう?』『「さみしさ」の力』(以上、筑摩書房)等。

 

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『何でもないことで心が疲れる人のための本 「隠れ内向」とつきあう心理学』
著者:榎本博明 日本経済新聞出版 1650円(税込)

在宅勤務が増えて気分がラクになった、親しい相手でも一日中一緒にいるのはつらい、ひとつのことが気になりだすとずっと頭から離れない……。人づきあいは苦手ではないつもりなのに、家に帰るとぐったりしている。そんな人を「隠れ内向」と名づけ、心理学博士の著者がその原因や心のクセを分析。知らず知らずのうちに蓄積される心の疲れを軽減・解消するためのヒントを授けてくれる一冊です。


イラスト/かりた
構成/金澤英恵

 


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