このところ、多くの商品で値上げが相次いでいます。直接的には原油価格の高騰やコロナ後の景気回復期待による需要過多が原因ですが、これらはあくまでトリガーに過ぎません。今回の物価高騰は構造的なものである可能性が高く、今後、継続的に物価が上がっていく可能性は高いと考えられます。日本ではデフレが長く続いてきましたが、モノの値段は上がらないという過去の常識はもはや通用しなくなるかもしれません。

 

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筆者は数年前から、日本でも近い将来、物価上昇が発生する可能性が高いという話を繰り返してきました。経済というのは物価上昇と下落を周期的に繰り返すことが経験則的に分かっており、物価上昇の期間が下落よりも圧倒的に長いことも歴史によって証明済みです。30年以上も物価下落が続くというのは異常事態ですから、何かをきっかけに物価上昇に転じる可能性は高いという状況でした。

マクロ的な経済環境もインフレになりやすい条件が整っています。数年前から中国の爆買いという現象が世間を賑わせていましたが、こうした爆買いが発生した理由は、中国が経済が成長し、国民生活が豊かになったからです。日本人も生活水準が大幅に向上した80年代には、怒濤のように全世界の商品を買い漁っていました。つまり、豊かになった国の国民は、古今東西を問わず、同じ行動を取る可能性が高いのです。

世界に目を向けると、アジアやアフリカなどの新興国が近年、めざましい経済成長を遂げています。ひとつの国としてはそれほど大きくありませんが、こうした新興国が束になれば中国と同じような経済力を発揮します。つまり、今後はアジアやアフリカの新興国が次々と爆買いを始める可能性が高く、全世界的に物資が不足し、モノの値段が上がることが予想されていました。

金融面でも同じことが言えます。日本を含む世界各国は量的緩和策を実施しており、大量のマネーを市場にバラ撒いています。大量のマネーを市場に供給してインフレにならなかったことはありませんから、タイミングの問題はともかくとして、量的緩和策を実施した以上、いつかはインフレになる可能性が高いというのが一般的な解釈と考えてよいでしょう。

全世界を見渡すと、物価が上がる材料ばかりであり、物価が下がる要素が見当たりません。日本人が日頃消費する製品の多くは輸入で成り立っていますから、世界の物価が上がれば、輸入品の値段も上がり、最終的には国内の物価も上昇する可能性が高いとの推測が成り立ちます。

 
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