焦りや不安が悪化の原因だった


実はこの「焦り」「不安」が、認知症の人には禁物なのです。「焦り」や「不安」といっ たストレスは、認知症を悪化させる原因になると言う専門家も多いのです。

 

悪化させるだけでなく、たとえば、

● 食事の直後に「ご飯まだ?」と尋ねてくる
● 自宅にいるのに「帰ります」と出ていこうとする
● 怒りっぽくなる、暴言や暴力が出る 

といった、「不可解な行動」を引き起こすことすらあります。〝うまくいかないこと〟に遭遇したり、〝周囲との衝突〟が増えると、誰でも焦ったり、不安な気持ちになり、ストレスが大きくなりますよね? 認知症の人の場合、そういったストレスが症状、すなわち「不可解な行動」として出てくるわけです。 
でも、それって実は、認知症の人にだけ起こることじゃないかもしれません。

 

先ほどの〝後出し負けジャンケン〟をセミナー会場ですると、認知症ではないはずの参加者のみなさんも「不可解な行動」をし始めます。後出しなのに先に手を出してしまう人、負ける手を出すのがルールなのに、勝つ手を出してしまう人、ジャンケンのスピードに追い付けなくなる人、途中からグーのまま固まってしまう人、という具合です。

でも、もし、ジャンケンの手をもっと、ゆーーーーっくり出していたら……。そうやって、焦りや不安が極めて少ない状況をつくりだせていたら......。あるいは〝後出し負けジャンケン〟であっても、うまくできたかもしれません。

実は、ここにケアのヒントも隠されているのですが、それはこの先、さらに読み進めればわかっていただけるでしょう。〝認知症の人にも、ここまで述べた「ジャンケン」と同じようなことが起こっているらしい〟ー今はそう理解していただければ十分です。