『愛の不時着』以降、韓国ドラマが大ブームになっています。かつての「ヨン様ブーム」「グンちゃんブーム」とは、ファン層も周りの見方も変わっていているようです。

『愛の不時着』の大ヒットに端を発した今回の韓ドラブームは、「一過性のブームではなく、本物だと確信し、『韓国ドラマ=イケメン&恋愛』の偏見から解き放つことが私の使命」と語るのは、20年以上韓国カルチャーを追っかけてきた映画ライター/コラムニストの渥美志保さん。この度、新著『大人もハマる!韓国ドラマ 推しの50本』を上梓しました。

社会派サスペンスから、アクション、歴史スペクタクルなどどれを観てもハズレなしの名作揃いの韓国ドラマから、渥美志保さん激推しのドラマ4作品をご紹介! もう観た方も、観ようか迷っていた方も、果てしなく深い“沼”の世界へどうぞ……!
 

ベタなドロドロ展開なのに、ドロドロにならない『華麗なる遺産』のスゴさ

『華麗なる遺産』©SBS/U-NEXTにて配信中

ケーブルテレビが地上波がやらない刺激的なドラマを作る以前、2010年あたりまでは、韓国で大ヒットするのは「ベタなドロドロ展開なのに、ドロドロな印象にならない」というドラマばかりでした。韓国で2009年に放送され最高視聴率47%を獲得した『華麗なる遺産』は、まさにそういう作品です。この作品のドロドロ感のなさは、主演二人の爽やかなイメージによるところが大きいと思います。

 

演じたのは、韓国の人気スターで「国民の弟」と呼ばれたイ・スンギ(『花遊記 ファユギ』)と、「この人は歳を取らないだろうか?」と思わせる国民的清純派スター、ハン・ヒョジュ(『トンイ』)。

物語は外食産業大手「チンソン」の相続を巡る様々な思惑と陰謀、そこに関わる4人の男女の四角関係を描いていきます。ヒョジュ演じるウンソンは会社経営者を父に持つ、明るく前向きで負けん気なお嬢様。スンギ演じるファンは「チンソン」の社長スクチャを祖母に持つ、傲慢でわがままな放蕩息子。同じ飛行機で留学先のNYから戻った二人は、誤って相互いの荷物を持ち帰ったことで出会います。ウンソンのファンへの第一印象は最悪です。

『華麗なる遺産』©SBS/U-NEXTにて配信中

帰国したウンソンにはあらゆる不幸が襲いかかります。まず会社の経営不振で父が行方をくらまし事故遺体として発見されるのです。これをきっかけに正体をあらわにした、父の後妻ソンヒ(キム・ミスク)は判別不能の遺体を確認して密かに保険金を受け取り、「今後は別に生きよう」とウンソンに宣言。さらにウンソンの弟でサヴァン症候群のウヌ(ヨン・ジュンソク『サメ 愛の黙示録』)をどこぞに捨てきてしまう。鬼畜です。

そんなことを想像すらしないウンソンには、驚くべき幸運が。ある偶然から命を救った相手が「チンソン」の社長スクチャで、彼女に見込まれて(もちろん売上アップの条件付きで)会社の後継者に指名されたのです。そして同居するためにスクチャにつれてこられた屋敷で、あのクソ御曹司ファンと再会。この展開にカチーン!ときたファンはウンソンに対抗し、犬猿の仲のふたりは同じ店で働くことになります。

 
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