「漢字とひらがなの表記はどう使い分けていますか? ルールはありますか?」とご質問をいただきました。読みやすい文章をデザインする上で、漢字とひらがなの見た目のバランスを気にすることはとても大切です。今回は、表記ルールと見やすいバランスに調整すべきポイントについてお伝えします。
・とっつきやすい見た目にするなら「ひらく」
・「うるおう」か「潤う」かは、どっちでも良くない
・熟語と漢字がくっついた“四字熟語もどき”を避ける
・ひらがなにしたほうがいい言葉
・今日のBata’s Point
とっつきやすい見た目にするなら「ひらく」
ひと昔前の新聞や文庫本を見ると、漢字の多さと文字の小ささに「うわぁ。黒い!」とびっくりすることがあります。時代とともに印刷物もデジタル上の文章も、ひらがな多め・文字は大きめ、つまり“白が多め”になってきているんですね。
言葉をひらがなで記すことを「ひらく」、漢字で記すことを「とじる」と言います。今はどちらかというと「ひらく」方向にシフトしてます。そのトレンドが良いか悪いか、好みは別として、時流にあった字面バランスに整えることは、読んでもらうためにとても重要です。
「うるおう」か「潤う」かは、どっちでも良くない
かな書きにすべき語句は、出版社や新聞社、媒体によって表記ルールがあります。講談社には講談社の表記ルールがあるのですが、雑誌によってルールが異なる場合もあります。対象とする読者の年齢層やトーン&マナーが違うからです。
私は以前、広告営業部にいて、女性誌に掲載する化粧品会社のタイアップ広告などを担当していていました。クライアントさんの表記ルールと雑誌のルールが違って板挟みになることもありました。たとえば、当時、雑誌『Grazia』の表記ルールは「潤う」、同じ講談社でも『with』は「うるおう」。クライアントの化粧品ブランドさんの希望は「潤う」だったりすると、なぜ『Grazia』はよくて『with』はダメなのかと揉めることも……。
当時は今よりずっと編集部ごとの表記ルールに厳密だったので、クライアントさんが希望しようと雑誌のトンマナに合わせてくださいと押し戻すことも多かったのです。まだ大学でたての二十歳そこそこだった私は「どっちでもよくない?」と喉まで出かかりながら、100回くらい飲み込んで……。いろいろ飲み込んできた40代にして、ようやっと今「うるおうと潤うはどっちでもよくない」ことを理解しました。
漢字なら大人っぽく落ち着いた印象、ひらがなだと優しく軽やかな印象になりますね。一つの記事の中で、「潤う」と「うるおう」、「綺麗」と「キレイ」と「きれい」などが混在しないことも重要です。表記の揺れは、気持ちが行き届いておらず、だらしない印象を与えます。
“ひらくかひらかないか”、どちらを選択して統一するのかは、読者にどんな印象をもってもらいたいか、読んだ後にどんな気持ちになってもらいたいかが凝縮されたもの。漢字にするかひらがなにするかをないがしろにすることは、読者をないがしろにすることにほかならないのです。
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