ドラマ『おいハンサム!!』の原作・伊藤理佐さんの名作『おいピータン！！』のピータンの由来とは？

「食べることは、生きること」と誰が言ったかは知らないけれど、私たちの日常と食は、切っても切り離せない関係にあります。食の好みや習慣を見れば、その人の人となりを垣間見ることができます。また、食によって誰かとの距離がぐっと近づくこともあります。そう考えると、食って不思議ですよね〜、などとしみじみ考えてしまうのは、伊藤理佐さんが描く、食と恋をテーマにしたオムニバスショート『おいピータン！！』『おいおいピータン！！』を読んだからでしょうか。連載24年目となる今年１月には、本シリーズを中核原作に、『渡る世間はオヤジばかり』（電子書籍が好評配信中！）など、伊藤さんの他作品のエッセンスも加えたドラマ『おいハンサム!!』（フジテレビ系・毎週土曜よる11時40分〜）も始まりました。　

『おいピータン！！』がKissで連載が始まったのは、1998年のこと。2018年まで続き、単行本は全17巻発売されています。同じく2018年から現在は、続編の『おいおいピータン！！』が連載中です。

『おいピータン！！』連載当初、作者の伊藤理佐さんはアラサー世代ということもあって、いま１巻を読み返すと、失恋したばかりの女性、今日こそ不倫相手と別れたい！　と願う女性、付き合って３ヶ月のラブラブなカップル、お互い仕事がうまくいっていないさえないカップル、夫が浮気し、別れを考えている妻など、おそらく当時の伊藤さんに近い年齢層の人物たちが登場しています。基本的には一話完結で、そこにはささやかかつ笑える日常と、さまざまな食のエピソードが盛り込まれています。

といっても、登場するのはグルメや美食というよりは、誰もが日常的に食べているようなものばかり。だからこそ、読みながらわかりみが深い。

『おいピータン！！』という、奇妙なタイトルにも、実は由来があります。それは１巻の第二話「ひとり」に登場する、台湾料理店の常連男性。いつも一人でサッポロビールとピータン豆腐を頼み、飲んでいるところから、こっそり「ピータン」と名付けられていたのです。

こんなチョイ役のどこにでもいそうな男性・大森さんが、まさかその後、主役キャラになるとは！　ぽっちゃり体型で仕事に明け暮れ、彼女なし。「いい女が近くにいないだけなんだよ」とボヤいています。

残業でたまたま残っていた後輩の女性・渡辺さんを誘っておでん屋で飲んでみたところ、おでんのネタの好みと酒のチョイスがまるかぶり！　というわけで、お互いを意識するようになります。

『おいピータン！！』の最後には晴れて結婚し、『おいおいピータン！！』では夫婦になった二人がクロとトラという２匹の猫と暮らしています。大森さんは、見かけは決してイケメンではないし、登場した当初は何ならちょっと嫌な奴だったのだけど、実はいいところがいっぱいある男性。食べっぷりの良さや食の好みからもその人柄がにじみ出ています。

そして、大森さんが渡辺さんにビビビと来た時に思った、「いい女がいなかったんじゃなくて　いい女を見つけられなかったおれ なのね　きっと」という言葉の深さよ！　日々何気なく口にしている食べものや身近な人に対しても同じことが言えるのではないでしょうか。

『おいおいピータン！！』になって、『おいピータン！！』初期の頃の恋の要素は減ってきたかもしれませんが、日常を笑いと共に切り取る鮮やかさは輝きを増してます。個人的にはクロやトラが出てくる猫エピソードが好き（2匹ともかわいい！）。

『おいおいピータン！！』1巻の巻末マンガによると、タイトルの「おいおい」には、「老い老い」も混じっているかもしれません、とのことですが、歳を重ねても、美味しいものを食べて、笑っていれば、また元気に生きていける！　ということがじわじわと感じられる名作です。ドラマも始まったことですし、ぜひ原作の“伊藤理佐ワールド”も味わってみて！

ドラマ化を記念して、『おいピータン！！』１巻３話、『おいおいピータン！！』１巻３話を無料公開！

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