超高齢社会を生きる私たちが望むのは、ただ長生きするのではなく、“死ぬまで元気”でいること。なるべく人の手を借りず、最期まで自立した生活を送りたい。そのために、今すぐできることは何か。NY在住の老年医学専門医、山田悠史先生の新刊『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(6月24日発売)から、その答えをひとつご紹介します。

人生の最期について、特に日本国内では、多くの人が事前の準備をできていないことが知られています。これは日本の文化的背景と密接に関連しているのかもしれません。

厚生労働省は、過去に「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(参考文献1)を行い、国民の声をまとめています。

約6割の人が最期について話し合っていない


その公表されているデータによれば、意思決定を代行する人を決めているのは、全体の22%にとどまりました。

指定しているわけではないものの「当然夫(妻)がするものだ」と思っている人も多いかもしれませんが、何も話をしたことがなければ、残された家族としては戸惑う気持ちが生まれても不思議ではありません。何があるわけではなくても「万が一何かあったらお願いしたい」と一言でもお願いをしておくことは大切なのかもしれません。

日本には「以心伝心」がよいとされる風潮がありますし、「自然」と家族みんなで決めるものだというような傾向もみられます。それが成立するのであればよいのかもしれませんが、家族のメンバーが複数いる場合に、皆が同じように自分のことを理解し、同じ方向を向いているとも限りません。

 

皆さんは、「人生会議」という言葉を聞いたことがあったでしょうか。
人生会議とは、「もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのこと」です。米国では「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と呼ばれており、日本でも過去には同じ呼び方をされていましたが、なかなか浸透せず、「人生会議」という愛称が付けられたという経緯があります。

また、人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)のことを知らないと答えた人は、75.5%にも上り、終末期ケアについて家族と話をしたことがあると答えた人は、40%程度にとどまりました。

 

その理由として、「話し合いたくないから」という答えは約5%しかなく、必ずしも話す意思がないわけではないことがわかります。一方で「話し合うきっかけがなかったから」という人は過半数に上ります。

また、人生会議の認知度の低さから想像できることですが、事前指示書を作成したという人は、60歳以上に限定しても13.6%と非常に低い数字にとどまっています。

これらの数字は2017年に調査されたものであり、その後の厚生労働省の様々な取り組みによって、認知は拡大しているかもしれませんが、十分に認知が広がっているとも考えにくく、私たちは全体に準備不足なのかもしれません。

 
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