超高齢社会を生きる私たちが望むのは、ただ長生きするのではなく、“死ぬまで元気”でいること。なるべく人の手を借りず、最期まで自立した生活を送りたい。そのために、今すぐできることは何か。NY在住の老年医学専門医、山田悠史先生の新刊『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(6月24日発売)から、その答えをひとつご紹介します。

健康な老後に不可欠とされる「5つのM(身体機能、認知と精神、多様な病気、くすり、生きがい)」というレンズを通すと、老化によって起こること、また健やかに歳を重ねるために何ができるのか、ということが見えてきます。もしかすると、老化のことを知る中で、不安の方が大きくなってしまうという方もいるかもしれません。

歳を重ねる中でどうしてもできなくなってしまうこと、衰えを感じてしまうこともあるかもしれません。ただし、年齢によって変わらないこともあります。
 

歳を重ねて大きなプラスになることもある


例えば、言語の能力や空間認識能力は、30代と60代を比べてみると、むしろ60代の方が高い傾向にあり、成長を続けられることが知られています(参考文献1)。そして、その後も比較的その能力を維持する人が多いことも知られています。

年齢によって大きくプラスになることもあります。経験が積み重なり、それが知恵となります。あるいは、若いうちには、子供の病気や自分の病気で1年に4回も5回も仕事を休まなければならないかもしれませんが、歳をとってからは、風邪をひく回数が減り、そのような欠勤なく働けるかもしれません。

 

歳をとることには、良いことと悪いことの両面があり、その意味は個々人によっても大きく異なります。

にもかかわらず、歳をとることは、赤ちゃんの時は「人々の喜び」に、ある時からは「自分は変わっていない錯覚」に、そしてある時からは「悲しいこと」に変わっていきます。これは多くの人に潜む先入観という一面もあるのではないでしょうか。

 

現実には、すべての人がその年齢に関係なく、日々同じ速度で歳を重ねています。加齢をしていない人はいません。歳を重ねることが残念だというなら、実はそれは、生きることが残念だと言っていることに他なりません。

あるいは、「高齢者を守るために、子供の未来を犠牲にするな」という意見を目にすることもありますが、子供は将来、高齢者になります。高齢者を守ることは、子供の未来を守ることです。

 
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