かれこれ2年以上も続いているコロナ禍は世界中の人々の生活に大きな影を落としていますが、そんななかで働き方が大きく変わった人も少なくないでしょう。その一例がリモートワークだと思いますが、仕事仲間と過ごす時間が減るのに伴って人間関係のトラブルや悩みも減ったかといえば、さにあらず。コロナ禍ならではの軋轢があちこちに生じていて、なかにはいじめに発展するケースもあるそうです。

そのような過酷な状況を間近で感じているのが、職場いじめの現状をつづった『大人のいじめ』の著者で、ハラスメント対策専門家として年間約5000件の労働相談に関わっている坂倉昇平さんです。今回は、坂倉さんにコロナ禍で顕著になった「いじめ」の特徴、特に女性たちが直面している苦境についてお聞きしました。

坂倉昇平(さかくら・しょうへい)さん
1983年生まれ、静岡県出身。ハラスメント対策専門家。京都大学大学院文学研究科修士課程修了。2006年、労働問題に取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」を設立。08年、雇用問題総合誌「POSSE」を創刊し、同誌編集長を務める。現在は「POSSE」理事として、年間約5000件の労働相談に関わっている。共著に『18歳からの民主主義』(岩波新書)、『ブラック企業vsモンスター消費者』(ポプラ新書)。


まるで兵糧攻め!使い捨てにされてしまう女性たち


──コロナ禍で労働環境が変わったことで顕著になった女性へのいじめはありますか?

顕著になった傾向が三つあります。一つは休業によって生じるいじめですね。主に飲食業、接客業といった女性の割合が多い業種で生じているのですが、シフトが大幅に減らされるかゼロになっているのに職場からは解雇されず、かといって給料が補償されるわけでもなく、兵糧攻めのような状況に陥って自ら辞めざるを得なくなってしまうパターンですね。

 

──パワハラのようにあからさまでないだけに、より陰湿なものを感じますね。

シフトを組んだ後に休業した場合は給料を補償する必要がありますが、あらかじめゼロであれば給料を出さなくても経営側は労働基準法には問われませんからね。実は、厚生労働省が出している雇用調整助成金を申請すれば従業員の給料をそこから捻出できるのですが、残念ながら「そこまでして従業員を残す必要があるの?」と冷淡に考える経営者が多い。忙しいときはめちゃくちゃシフトを入れて働かせていたのに。このように、使い捨てのような目に遭う女性が増えています。