Netflix『ダイアグノーシスー謎の症状を探るー』公式ホームページより。ダイアグノーシスとは英語で「診断」という意味。原因不明の症状に悩まされる人たちを、ある女性医師がネットを駆使して情報集め、原因またはベストな治療法を探っていく医療ドキュメンタリー。ネタ元はニューヨーク・タイムズ・マガジンのコラム。

 


「医療知識が全くない」という理由で病院にいく日本人


日本は世界一高齢化が進んでいる国と言われるだけあって、その医療費の増大が長年問題視されています。私が取材をさせていただいた医師の中には、「医療費が日本を滅ぼす」なんておっしゃる方もいましたが、これはあながち盛った話でもないよう。そんな医療費のプールに溺れそうな国の国民として、是非見ていただきたいNetflix作品があります。それは『ダイアグノーシスー謎の症状を探るー』です。

皆さんは、私たちの税金がどれくらい医療費として使われているかご存知でしょうか? 2019年度は44兆円超。2020年度の医療費は、コロナの影響もあったのか若干減っていますが、それ以前は年々増え続けており、このままいくと2025年度には60兆円を超えると言われています。もはや数字が大きすぎてピンとこないほどですが……。

なぜこれほどまでに医療費が増え続けているかというと、もちろん高齢化が挙げられるでしょう。でも、いくら高齢化で病院に行く人が増えていることが原因といっても、医療費が高ければ二の足を踏む人も増えるはず。実際、コロナウイルスが流行してからは、感染を恐れて病院へ行く人が減り、それが若干の医療費減につながったと思われます。

病院に行くのが悪いわけではない


コロナのせいで病院へ行かず、重大な病気の発見が遅れることは起こってはならないことです。が、病院へ行かなかった人たちの中には、コロナ以前は「ケガや病気のことなんて全く分からないからとりあえず病院へGO」という習慣だった人も多いのではないでしょうか。実際、私の知り合いは、以前は転んですりむいても病院に行って治療してもらっていたそうですが、コロナ禍中はさすがに「すり傷ごときで感染したら……」と、自分で消毒薬を買って対処したそうです。

私はこの知り合いに、なぜそんなに気軽に病院に行くのか聞いたところ、「医療知識が全くないから不安」とのことでした。インターネット時代の今、ちょっと調べれば、すり傷ができた場合はどう悪化することが怖くて、そうならないためにはどうすればいいか、という情報に簡単にたどり着けるはずです。不安というのは本心でしょうが、その裏には同時に、「自分で調べてケアするのが面倒」という思いもあるのではないでしょうか。もちろん自己判断は危険という意見もあると思いますが、一方で日本は、世界でも有数のヘルスリテラシーが低い国、と言われていることも知っておく必要があると思うのです。

ヘルスリテラシーとは、「健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解し活用する力」です。これは言い換えれば、何でもかんでもすぐ病院へ行くのではなく、ある程度は自分で知識を身に着け予防や対処をしよう、ということでもあるでしょう。もちろん、かかりつけ医を持つという積極的な情報収集も必要です。そしてこのヘルスリテラシーを高めることが、ひるがえって医療費増大を防ぐ鍵を握っている、とも言われているのです。

 
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