前回の記事で紹介したように、2年間という期間限定で夫の地元・山形への移住を決めたファッションエディターの昼田祥子さん。移住して1年4カ月が経った今、どのような暮らしをしているのでしょうか。

自宅から見える周囲の山々。「毎朝この景色を見るたびに、ありがたいという気持ちになります」


一番の感動は自然の美しさ


「山形に来て一番感動したのは、やっぱり自然の美しさです。自然に癒された部分はすごく大きくて、自然の力によってもっと力を抜いていいよって思えたんですよね。私いま、ベランダから見える山を見て毎日泣けるんですよ。でも東京にいた頃は、そんな自分になれるなんて思ってもいなかったですから。昔はいつもカリカリしていて、いろんなことに対してありがとうって言えなかったんですよね。それがこっちに来て肩の荷が降りたんでしょうね。変なこわばりが溶けて、それは自然の力が大きかったと思います。

そんな風に、あるものに感動できる健康な心を取り戻せたことが、移住して一番良かったことかもしれません。以前より明るくなったね〜って言われたりしますから(笑)」

自宅近くの蔵王温泉スキー場で見られる世界的にも有名な樹氷。「こちらに住んで初めて見ましたが、想像を超える美しさ。自然ってすごい!ですよ、本当に。雪のある街で暮らすのは初めてですが、雪ってなんでこんなに真っ白で綺麗なんだって思ったり、自然が与えてくれるよく分からない感情が日々芽生えています」


東京のいいところが目につくように


「東京には仕事で月に2回ほど行っていますが、逆に東京のいいところが目につくようになりました。電車が発達している、毎日晴れていて布団が干せる、雪を気にすることなく洗濯できる、美術館が多い、ファッションが揃っているなど、山形にないものすべてがいいと思えて、なんでもないことがありがたいと思えるように」。東京が嫌いになって離れたわけではないですが、「東京って刹那的ですよね」と昼田さん。

 

「特にファッションの仕事をしていると、消費の連続であっという間に洋服のトレンドも変わるじゃないですか。そのスピードで生きていると、いろんなものが通り過ぎて行って刹那的だなってすごく思っていたんですよね。でも東京の人混みは今でも大好きですよ」

雪ばかり降っていて、ほとんど晴れ間が見られない山形の冬。「太陽が出ない日は本当にどんよりしていて気持ちも下向きになります。だからこそ、太陽が見える日はありがたいなって一層思うようになりました」


QOLが格段に上がった


「今は本当に理想的な暮らしを送ることができています。山形駅に近いマンションで都会的な暮らしをしながら、山々に囲まれてるっていう。生活レベルは変わらずに自然が近くに来て、東京に住んでいた頃に一番足りなかったことを補えました。だからQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が格段に上がりましたよ」

街全体がのんびりしているので「公園に行くだけでも気持ちがいい」と昼田さん。

山形の食に魅了され続ける日々


ほかに移住して良かったことを尋ねると、「食べ物が美味しいこと!」と即答。山形には多くの伝統野菜や伝統料理があり、「東京の人が食べたことがないものばかりだと思う」と昼田さん。

「山形の食はこれまで生きてきてご縁のなかった味ばかりで、食の王国と呼ばれる山形のすごさを実感しています。私の“美味しい”の世界は確実に広がり、そして太りました(笑)。山形には、たとえば古くから守り受け継いできた伝統野菜が150以上あって、我が家は芭蕉しめじ、高畠豆もやし、赤根ほうれん草などをよく食べています。春になると、一番の楽しみはやっぱり山菜。厳しい冬を乗り切ったからこそ食べられるご褒美で、この時期はわらび、青こごみ、うるいなどを毎日のように食べています。また、体を温めるという意味もあると思いますが、山形は汁物が充実しているんですよね。孟宗汁、どんがら汁、納豆汁、粕汁、魚の味噌汁など、汁物のレパートリーが増えました。まぁ作るのは夫ですが……(笑)。それから買い物をしていて思うのが、山形市って牛肉が安っ! ということ。お陰で牛肉の出番が増えました」

山形ならではの郷土料理。左上から時計回りに①食用菊「もってのほか」の和えもの。②秋になると芋煮を作って、バーベキューのように外で食べるのも山形の文化。③実は国内のラーメン消費量No.1の山形。ラーメンと蕎麦のお店は本当にたくさんあって、すっかり麺好きになってしまいました。味のレベルの高さにも驚き!④おにぎりを青菜漬けで巻いた弁慶飯。
 
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