言いそびれた言の葉たち。いつしかそれは「優しい嘘」にかたちを変える。

これは人生のささやかな秘密と、その解放の物語。

これまでの話国見桃香(38)はシングルマザー。不動産営業職として日々奮闘している。一人娘の佐知(11)と二人三脚で暮らしていた。佐知の可能性と世界を広げるため、中学受験を決意する二人。進学費用は貯めているものの、私立女子校の煌びやかな生活のイメージがつかず、元夫の信也に相談のメールを送ろうとして、思いとどまる桃香だったが…?
 


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第26話 シングルマザーの逆転大作戦④

「私、親ガチャに外れたんだ」育ちのいい夫の行動が、劣等感を刺激する...高卒妻の苦悩【シングルマザーの逆転大作戦④】_img0
 

「私立女子校生がみんな派手な暮らしをしているか、ですか? それは学校によります。確かに『有閑倶楽部』みたいな学校もありますが、とくに進学校や新しい学校は一般のサラリーマン家庭もたくさんいらっしゃいます。

それも含めて、校風が佐知さんやご家庭に合うかどうか、きちんとご自身の目で確かめてみてはいかがでしょうか。校風が合うかどうかは、じつは偏差値よりも大切なことですよ。私学はそれぞれカラーが全く異なりますから」

昨夜は、元夫の信也に私学の様子を聞き、自分の身に何かあったときには遺すお金で佐知を卒業させてやってほしいと頼もうとしていた桃香。しかし彼に訊く代わりに信頼する塾の先生に尋ね、返ってきた言葉にホッと胸をなでおろした。

すると塾長は、じっと桃香を見たあと、意外な言葉を口にした。