言いそびれた言の葉たち。いつしかそれは「優しい嘘」にかたちを変える。
これは人生のささやかな秘密と、その解放の物語。
第27話 シングルマザーの逆転大作戦⑤
「今日は急にご連絡して、申し訳ありません」
桃香は、佐知の友人である聡子の母親がカフェに到着するなり、席から立ち上がり深々と頭を下げた。
「やあだ、どうしたの国見さん、そんな改まっちゃって。いいのよ、いつも聡子が塾に行っている間は息抜きタイムなの」
聡子の母、河合真紀子は、桃香の向かいの席に座ると目が合ったスタッフにコーヒーを、と頭を下げた。一昨年、PTA当番を一緒に担当したため学校で会えば言葉を交わすが、約束をして会うのは初めてだった。急に連絡がきて、首を傾げたはずだが、真紀子は快く時間を作ってくれた。
「今日は本当にありがとうございます。貴重なお時間を頂いているので本題に入りますね。メールでご相談したように、佐知が聡子ちゃんのお姉さんが通っている学校に憧れています。でも……お恥ずかしながら、私は佐知が小さい頃に離婚してしまって。そのような場合、実際に学校生活を送るうえで、やっぱり難しいことがあるのかなって……。どなたに訊いても、本当のことなのかわからなくて。上のお嬢さんが通っていらっしゃる河合さんに、お伺いした次第です」
真紀子は、一息に俯きながら話す桃香を前に、ゆっくりと口を開いた。
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