世帯分離って一体なに?
世帯分離とは、同じ住所に住む家族を2つの世帯に分けることです。今回の相談者・早紀さんの母親は、早紀さんの夫の世帯に入る形で住民票を移しました。世帯を分けるとなると、夫と母親の2人が世帯主になる必要があります。住民票登録の世帯とは、世帯の生計を維持する代表者のこと。同じ住所に世帯が複数あっても、各々の家計が独立していれば世帯分離が可能で、早紀さんの母親のように当然1人でも1世帯として認められます。
介護における世帯分離のメリット
ではここで、介護における世帯分離のメリットを見ていきましょう。メリットは大きく分けて3つあります。
メリット① 介護費用の軽減
介護保険の自己負担額などは、世帯収入によって変わります。仮に子夫婦が同じ世帯だと、たとえ親の年金収入が低くても、高所得世帯とみなされ費用が高くなってしまいます。特に女性が1人で遺された場合は年金収入が低いケースが多いので、子夫婦と世帯を分けておくと「住民税の非課税世帯」になる可能性が高くなります。そのため、世帯分離することで「介護費用の自己負担額の上限を下げられる=高額介護サービス費支給制度を利用しやすくなる」のです。
メリット② 国民健康保険料/後期高齢者医療保険料が低くなる
国民健康保険料も後期高齢者医療保険料も世帯全体の年収が算定基準のため、子と親が同一の住民票よりも、世帯分離をしていた方が納付額を下げることができます。
メリット③ 介護施設の住居費用や食費の自己負担が減る
介護施設の居住費や食費などの自己負担限度額は、世帯年収や預貯金額で決まります。そのため、世帯分離による軽減措置により、自己負担を減らすことができます。
世帯分離のデメリットにも要注意
ここまで世帯分離のメリットを述べてきましたが、世帯分離は必ずしも良い面だけではありません。逆にデメリットとなるケースは、大きく分けて3つあります。
1つは、子世帯が自営業などで国民健康保険に加入している場合。国民健康保険料の負担上限を超える世帯が分かれると、それぞれの世帯の国民健康保険料が上がってしまうケースがあります。
また、要介護者が2人以上の場合、同一世帯であれば高額介護サービス費などの合算ができますが、世帯分離すると合算できなくなり、割高になってしまう場合も。
さらに世帯主の勤務先が扶養手当をどう扱うかによってもデメリットは生じます。会社によっては、扶養家族から外れると扶養手当が支給されなくなることも多いので注意が必要です。
世帯分離をするかしないかの見極めは?
そこで気になるのが「世帯分離をするかしないかの見極め」ではないでしょうか。そのラインはズバリ「高額介護サービス費負担上限額に達しているか否か」。要介護度が低いと上限額には達していない場合も多々あるので、その場合は介護度が高くなってから世帯分離を検討するのがオススメです。
「世帯分離によるメリットには何がある?」知っておきたい3つの得ポイント
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構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子
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