【坂井恵理×上野樹里】もしほとんどの男性も子供を産むようになったら、働き方ももっと優しくなるかもしれない

とっさに「それ私の子？」と言ってしまう亜季

上野：私が演じる亜季はフリーライターで仕事が大好きな女性なんですが、つわりに苦しんだり、甘いものがすごく食べたくなっていたりする桧山を、「もしかしたら我が身だったかもしれない」と思いながら見ているんですよね。だからこそ、妊娠中のイライラや不安で、急に怒ったり泣いたりする桧山を受け止め、実質的にも金銭的にも「支えなきゃ」と思っているんだけど、一方でスキルアップのために海外に出たいとも思っていて。桧山に「なんで自分ばっかり？　僕だって仕事がしたいのに」と言われたり。

坂井：立場が逆になれば、女性も男性と同じような態度をとることもあると思うんですよね。

上野：桧山から妊娠を聞かされた亜季が、とっさに「それ私の子？」と言ってしまう場面があるじゃないですか。あれも、一般的には女性から妊娠を告げられた男性が思わず口走ってしまうようなセリフだし（笑）。女性が妊娠する物語だと、結婚するのかしないのか、そういう流れの中で、パートナーに「仕事よりもこちらに関心を持ってほしい」とか「妊娠や育児にちゃんと参加するべき」という話になりがちだと思うんですが、妊娠したのが男性であることでちょっと違う展開になっています。

坂井：原作の中の男性の妊娠率は、女性の1/10ぐらいに設定しているんです。というのは、男性の自然妊娠率が女性と同じくらいになってしまうと、社会自体が男性妊娠をサポートしようと動く展開になるのではないかと思ったから。

上野：ドラマの中には、ポストが奪われないよう、出産後すぐに復帰する雑誌の女性編集長も登場しますよね。社会のサポートがない中で妊娠したことで、桧山も同じような心境 に追い込まれてしまう。じゃあそこからどういうふうに動いていくのか。その物語の展開がすごく面白いなと思いました。