嫁姑バトルに、男尊女卑、嫁同士のマウント合戦──。

“令和らしい価値観”が重要視されるなか、令和らしからぬドラマが始まりました。今回紹介するのは、土屋太鳳さん主演の『やんごとなき一族』(フジテレビ系)です。

©フジテレビ


“恋愛遠ざけ型”主流の令和のヒロインに逆行する佐都(土屋太鳳)


最近のドラマって、いわゆる令和っぽい作品が多いですよね。『東京ラブストーリー』(フジテレビ系/1991年)のように、“結婚した者勝ち”的な描き方をするドラマは減ってきているし、『やまとなでしこ』(フジテレビ系/2000年)の桜子みたいに、消費期限を焦って婚活に励むヒロインも少ない。

「仕事も趣味も充実してるし、男が入る隙がないんだよね。だって、今のままで楽しいし〜」と恋愛を遠ざけているヒロインの心に、スッとイケメンが入り込む。“恋愛=マイナス”から入るドラマが、令和らしい作品の代表的な例になってきています。

今期のドラマでも、「恋愛なんて、人生の無駄遣い!」(『恋なんて、本気でやってどうするの?』)、「結婚なんて、してる暇ない!」(『持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜』)と、ヒロインたちが“令和節”をかましていましたね。

それに比べると、『やんごとなき一族』の深山佐都(土屋太鳳)は、愛に生きるヒロインだと言えます。だって、結婚の挨拶をしに行ったら、急に突き飛ばしてくる義母がいるなんて、正直やばくないですか? いくら、男性のことが好きだとしても、心が折れてしまいそう……。それなのに佐都は、健太(松下洸平)が背負った運命を、一緒に背負う覚悟をして、深山家に突っ込んでいきます。

 


非現実的な世界観とドロドロの驚き展開!


この深山家の豪華すぎるセットも、本作の見どころのひとつ。『Kiss』(講談社)で連載中のコミックの世界観が、忠実に再現されています。あまりにも現実離れしているので、観ている最中はお城に迷い込んでいるかのような気分に。「上流社会って、こういうものなの!?」と翻弄されるのも、なんだか楽しくて。こんなご時世だからこそ、非現実的なドラマって、いいですよね。何も考えずに、作品の世界観に浸ることができます。

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ただ、佐都は「楽しい」なんて言ってはいられません。初対面で突き飛ばしてきた義母・久美(木村多江)のヤバさなんて、深山家の女たちのなかでは全然序の口。祖母の八寿子(倍賞美津子)は迫力が半端ないし、健太の妹・有沙(馬場ふみか)は嫌味な奴だけれど、それを凌駕するヤバさを誇るのが、長男の嫁の美保子(松本若菜)です。急に恐ろしい顔で佐都を罵り出し、頭から水をぶっかける。まぁ、ここまではドロドロ作品の定番ですよね。

しかし、美保子はそれでは終わらない。「ここは、庶民がのこのこ入り込めるような家じゃないの!」と言って、佐都をサウナ室に閉じ込めてしまうのです。いや、もうこれはさすがにやりすぎでは……? 一歩間違えたら殺人になってしまう、とハラハラしましたが、佐都はそんな逆境も跳ね返していきます。ハンマーでドアをぶち壊し、「庶民舐めんなよ!」と自力で脱出をする。その姿は、とてつもなくカッコ良かった!

このシーンを観た時に、『やんごとなき一族』は、令和版のシンデレラになるのでは? と思いました。王子様(=健太)に守ってもらうのではなく、佐都が彼を守ってあげる。昭和的価値観を描いた作品なのかと思いきや、新たなプリンセス像を体現していく作品になるのかもしれません。

第1話にして、強烈なインパクトを与えた『やんごとなき一族』。おそらく、佐都は変わってしまいそうだけど、健太だけは“闇堕ち”せずに、常識人でいてくれることを願います。
 

 


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