残業中の思わぬトラブル。深夜、トイレに駆け込んで……


システムエンジニアとして入社すると、激務が待っていました。一人で黙々と作業するのが苦にならない性格なので、仕事自体はどこまでも頑張れるのですが、連日深夜まで残業をするうちに、ブラジャーの締め付けが苦痛に感じられるようになってしまいます。

同じ姿勢でPC作業を12時間以上となると、朝はさほどでなくても、体型や体質のせいもありますがワイヤーがあたる部分の締め付けが苦しく、肩こりや頭痛、ときには眩暈を起こしてしまったのです。

いろいろなノンワイヤー商品を探して試しましたが、どうしてもデザイン性は二の次。テンションが上がるようなデザインのものはなく、それでも背に腹は代えられずに着用していました。

残業中にトイレに駆け込んで体をほぐしたりブラのホックを外したり、必死で体調を戻してなんとか仕事に戻る、というのを繰り返す日々。

でもある時思ったのです。

「下着は長時間外せないことが多いし、辛い思いをしているひとが他にもいるんじゃないかな? だとしたら、それを解決できるようなブラがあったら、皆が救われるかも」

 

また体調以外にも、漠然としたキャリアに関する悩みが生まれていました。

 

私は、「安定」を求めて就職しました。でも、その安定とは「ずっと自分の力でどこに行っても働きつづけられる力をつけること」であり、安定した大企業で働くこととは必ずしも一致していないと気づいたのです。

というのも、私が働いていた会社で扱うのは、インフラに関わるような大きな案件ばかりでしたが、イチ社員である私の仕事は当然驚くほど細分化されています。そのスペシャリストになることはできるのですが、例えば転職したり、独立したときにどこまでそのスキルが通用するか疑問でした。

もちろん、定年まで勤めることを考えればそれで充分なのです。でも今の時代、不確定な要素が多く、実際に会社の女性の先輩の中にはさまざまな理由で退職する人もいました。女性の場合、家庭との両立や配偶者との関係、その転勤などさまざまな転機が予想されます。

そういうことに対応できる自分でいたかった。どんな状況でも働き続けられる、自立できる、それが私の求める「安定」でした。

そんな思いがあったからかもしれません。本業は激務でしたが、モヤモヤを吹き飛ばすように、「こんなブラがあったらいいな」「作るとしたら、いつか商品にするとしたら、どんな素材だろう」と考え、調べるようになっていました。