そして、東堂は心春への愛が強すぎるあまりに、「娘さえ助かれば……」とさまざまな悪事を働いてしまいました。心春を取り戻すために、5年前の事件の模倣犯となり、友果を誘拐。真犯人に「心春を返すから、三輪(賀来賢人)の娘・優月(山崎莉里那)を誘拐しろ」と脅されると、戸惑いながらも実行してしまう。東堂のそばに亜希がいて、娘を失った苦しみを“家族”で分け合えていたら、またちがう未来があったのかもしれません。第二子が誕生して幸せいっぱいの鳴沢家と、刑務所で対面する東堂夫婦の対比が、苦しかったです。『マイファミリー』というタイトルの伏線が、回収されたラストシーン。まったくちがう結末を迎えた両者のシーンを交互に映す演出が憎くて、涙を誘いました。

 

東堂(濱田岳)が娘を“ちゃん”付けで呼んでいた理由


東堂が、心春を“ちゃん”付けで呼んでいる理由は、ネット上で大きな注目を集めてきました。亜希の連れ子説や、自分の子どもではない説、実は葛城の娘なのでは? とさまざまな考察が上がっていましたが、最終回では「心春は、どこだよ!」と呼び捨てにする場面がありました。

ここからは、筆者の考察になります。

 

仕事が忙しく、あまり心春の面倒を見ていなかった東堂は、娘のイメージが幼少期で止まっていたのではないでしょうか。幼くて小さい“心春ちゃん”が、ずっと頭のなかを支配していた。しかし、心春を想い続けた5年間という月日を通して、少しずつ“父親”になっていったのです。そして、ようやく真犯人を見つけた瞬間に、止まっていた時間が動き出した。

これまで、苦しんできた東堂。できることなら、生きている心春ちゃんと会わせてあげたかった。しかし、関係のない他人を巻き込んでしまった彼が、報われないラストを迎えたのも、ある意味で因果応報なのかもしれません。

毎週日曜日の夜、家族とは? 正義って? と、たくさんの問題提起をしてくれた『マイファミリー』。鳴沢家と三輪家、そして東堂夫婦にとっても、“家族”の希望が見つかることを願って。

 


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