「大丈夫なフリ」「完ぺきなフリ」「酔っていないフリ」。自分でも気づかないうちに、「フリ」をしていませんか。年齢を重ねると、いつの間にか「大人の仮面」をかぶっていたりするものです。

そんな「フリ」をしてしまう女性たちが主人公の映画『三姉妹』が公開されます。三人は30代から40代のミモレ世代。韓国でこの世代の女性たちを主人公にした作品は、実は多くありません。次女役を演じると同時に本作のプロデューサーを務めたのは、映画『オアシス』での体当たり演技がいまも語り継がれるムン・ソリさん。「初めて大きなスクリーンで観た時には号泣した」というムン・ソリさんに、作品が誕生した背景や韓国の女性たちの今について聞きました。

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役と自分が似ているからといって、演じやすいというわけではない


「すべてのシーンやセリフに共感しました。三姉妹それぞれ置かれた状況や性格は違うけれど、結局、わたしたちの中に存在するいろいろな気持ちだと思ったのです」
 
シナリオの初稿を読んだ瞬間に強烈な印象を受け、出演を決めたというムン・ソリさん。2015年の釜山国際映画祭で本作のイ・スンウォン監督と出会ったことを機にオファーを受け、シナリオを読んですぐに出演を前向きに考えたと明かします。次女のミヨンは、大学教授の夫と一男一女に恵まれ高級マンションに住む40代。熱心に教会に通い、聖歌隊の指揮者もつとめる模範的な信徒という役どころです。実際、演じようとすると自分とミヨンが重なり、役と向き合うのがつらいこともあったと言います。

「わたしもミヨンと同じように完ぺきなフリをする傾向があることに気づきました。家族や周りについ気を使いすぎるところがあるんです。似ているからといって、演じやすいというわけではない。演じる役が自分と完全に違う人物であれば、興味を持ってアプローチできるのですが、似ていて全部知っているタイプだと、むしろ難しいんです。監督と話し合いを重ね、シナリオにアイディアを出していくうちに、人物のイメージがより立体化。だんだんミヨンが自分の中に降りてきて、カメラの前では自然体で臨むことができました」

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ムン・ソリ Moon So-ri
1974年7月2日、プサン生まれ。成均館大学在学中より演劇活動を始め、99年にイ・チャンドン監督の『ペパーミント・キャンディー』で鮮烈に映画デビュー。次に出演した同監督『オアシス』(02)で脳性麻痺のヒロインを熱演し、ヴェネツィア国際映画祭で新人俳優賞であるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。韓国国内でも青龍映画賞新人賞をはじめ賞を総なめにした。翌年主演した『浮気な家族』(03)では韓国のアカデミー賞と謳われる大鐘賞の最優秀主演女優賞など国内外の賞を多数受賞し、名実共に実力派女優に。その後もホン・サンス監督作品『3人のアンヌ』(12)、『自由が丘で』(16)や、パク・チャヌク監督作品『お嬢さん』(16)に出演するなど韓国の名匠たちと作品を共にする一方、『なまず』(22)などのインディペンデント作品にも積極的に出演。また俳優業以外にも2017年には自身で監督・脚本を務めた『The Running Actress』(未)を発表、映画祭の審査員も多数務めている。本作では脚本に惚れ込み、主演とともに共同プロデューサーも務めた。

 


もう一つ苦戦したのは、資金集めです。プロデューサーとして参加し、シナリオの初稿から上映までにかかった時間は5年。投資の壁となっていたのは、主人公の性別と年齢でした。

「若い未婚の女性が主人公になる作品が多い韓国映画界では、既婚の女性、問題を抱えている既婚女性3人が主人公の話は珍しい。だから、投資を受けるのに時間がかかったんです」

しがない花屋を営む長女のヒスク(演じているのはドラマ「愛の不時着」で噂好きで気のいい北朝鮮の人民班長を演じたキム・ソニョン)は、元夫にお金をせびられたり、反抗期の娘に疎まれたり。夫と彼の連れ子と暮らす三女のミオク(演じているのは映画『ベテラン』の華麗なるキックで知られるチャン・ユンジュ)は、絶賛スランプ中の劇作家で昼夜問わず酒浸り。「完璧なフリ」をしている次女、そして「大丈夫なフリ」と「酔ってないフリ」をしていた長女と三女は、離れて暮らす父の誕生日会で顔を合わせ、クライマックスの場面で自分たちの心に隠していたパンドラの箱を開けることになるのです。

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「一番心に残っているのは、誕生日会のシーンで、何度も『ごめんね』という長女に、次女が『どうして姉さんが悪いのよ。何も悪くないのにごめんねって言わないで』と言うセリフ。習慣的に、特に女性たちは『わたしが悪かった。ごめんなさい』と謝りますよね。そんなふうに謝罪する必要はないのに」
 

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ムン・ソリさん主演&プロデュース映画『三姉妹』名場面集
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