ファイナンシャルプランナーとして、20年以上さまざまなご家庭の家計相談に乗ってきた黒田尚子さん。先行きの見えづらい時代、投資を推奨するマネー関連本も数多くありますが、黒田さんの著書『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか 「自然に貯まる人」がやっている50の行動』が教えてくれるのは、むしろ「毎日の行動を見直す」ことの大切さでした。

そこには、お金と幸せに関連した「人間関係」を見直すことも含まれます。貯金はもちろん大事ですが、貯金の多い・少ないだけに囚われない幸せな暮らしを手に入れるには、どんなことがポイントなのでしょうか。今回は本書から、「お金と人間関係」にまつわるテーマをご特別に紹介します。

 


年収が高くても「人間関係」が充実していない人は幸福度が低い


数年前、あるビジネス誌で、年収1000万円と400万円の人のビッグデータを解析して、幸福度をはかる特集の取材に協力したことがあります。年収が低い人が高い人よりも幸福になるためにはどうすべきか、を探るのが目的です。

 

調査結果によると、まず「人生の満足度」の平均値は、年収が少ない人よりも多い人のほうが高いことがわかりました。世界各国での実証研究を踏まえて書かれた『幸福の経済学――人々を豊かにするものは何か』(キャロル・グラハム著、日本経済新聞出版)でも、幸福度に「安定的な結婚生活、健康、十分な(それでいて過剰でない)所得などはプラスに働く一方、失業、離婚、不安定な経済状態は幸福感にマイナスに働く」と述べられています。

しかし、これはあくまでも平均値にすぎません。データでは、年収400万円未満でも満足度がとても高い人がいて、彼らは人生において「家族仲」「休日の充実度」「友人の数や友人関係」「異性関係」などを重視していることがわかりました。一方、年収1000万円以上でも、満足度が極端に低い人の要因は「異性関係」でした。つまり、相対的に、年収が低くても、家族や友人、交際相手など人間関係が充実している人の生活満足度は高く、人生を幸福なものと感じられること。逆に収入が高くても、夫婦仲や恋人との関係がうまく行っていない、あるいは孤独なケースは、極端に人生の満足度が低いようです。