時代の潮目を迎えた今、自分ごととして考えたい社会問題について小島慶子さんが取り上げます。

ニュースを聞いてしばらくは気持ちがひどく落ち込んでしまいました。人類は一歩ずつ進歩するものだと信じたいけれど、そうではないみたい。米トランプ政権下での最高裁判事の人事で危惧されたことが、本当に起きてしまいました。女性の権利向上のために尽力し、2020年に亡くなったルース・ベーダー・ギンズバーグ判事が存命だったらと思わずにいられません。

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すでに報じられているように、アメリカの最高裁判所は6月24日、女性の人工妊娠中絶権を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を破棄しました。この判断が示されたのは、ミシシッピ州保健局と同州ジャクソン女性健康機関との間で争われていた裁判の最終判決の中。同州は2018年に妊娠15週以降の人工妊娠中絶を禁止しています。裁判では、その合憲性が争われていました。最高裁は最終判決の中で、1973年の「ロー対ウェイド判決」は「甚だ誤ったものであり、その判断が下された日から憲法と衝突していた」としたのです。
これによって、人工妊娠中絶を認めるかどうかは各州の判断に委ねられることになり、中絶を禁止する州は合計で26州に上ると見られています。

 


現在の最高裁判事9人のうち6人は保守派。今後は同性婚などこれまでに多くの人が努力を重ねてようやく勝ち取った権利も、保守的な司法判断によって覆されてしまうのではないかと懸念されています。ちなみに温室効果ガスの排出制限に関しても、規制強化を退行させるような判決を下しました