「人は一人では生きられない。今を生きるすべての人に必要な言葉」(花守さん)
ーー今回の映画『ゆるキャン△』の大きなテーマの一つが、大人になることの“ほろ苦さ”だと思います。いつまでも変わらずにあると思っていたものが失われたり、自分ではできているつもりが、いつの間にか周囲の大人に助けられていたりといった経験は誰しも経験することばかりですが、お二人は一番共感したのはどのシーンでしょうか。
花守 私は映画の後半に出てくる、リンちゃんとなでしこ、2人だけの会話が大好きで。リンちゃんが今直面している問題や、悩ましい気持ちを吐露するシーンなんですけど、それに対するなでしこの言葉が、自分自身も今まさに感じていることへの答えで。役と自分の気持ちがシンクロしているのをすごく感じられたんですよね。
ここは、人って一人では生きていけないんだよな、ということをすごく感じるシーンなんです。一人で生きられないのは決して悪いことではなくて、そうと知ったうえで、じゃあ自分は何ができるんだろうと考えてみる、という。これってリンちゃんだけじゃなくて、今生きている人たちみんなに必要な言葉だったんじゃないかなと思うんですよね。少なくとも自分には必要だったし、あのシーンに映画『ゆるキャン△』のテーマが詰まっていた気がします。大好きなシーンですね。
東山 私は今回、いろいろな見方をしていました。映画ではリンの職場の様子も多く描かれるんですけど、そこでリンの上司で刈谷さんという人が出てくるんですね。この刈谷さんが、“みんなの理想の上司No.1”みたいな(笑)、本当に素敵な上司で。仕事のモチベーションを保たせてくれつつ、足りないことがあればさりげなく助け舟を出してくれたり。でもそんなのちっとも表には出さずに飄々としている、とてもかっこいい先輩なんです。
きっと私も新人時代はこんなふうに助けられていたんだろうと感謝する、その一方で、自分が30歳という年齢になり、後輩も増えてきて。後輩のみんなを見ていると、何かを「やりたい!」と思う気持ちって、何よりも尊いなあって思うんです。リンでいうならキャンプ場作りをやりたい、それを記事にしたいという気持ち。それを温かく見守る大人たちの視線というものに、最近の私にはちょっとだけ心当たりがあるんですよね。後輩のやりたいことを、できることがあればさりげなくフォローしながら、その子がどういうふうに花開かせていくのか見守る立場に自分もなりつつある。だからリンのシーンでも、後輩としての自分と先輩としての自分、いろいろな目線がないまぜになって、ほろ苦さだけではないもっと複雑な感情を味わわせてもらえた感じですね。
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